―上海駐在員便り 2024年4月―

江蘇省蘇州市での伝統工芸品の展示販売について

  今年1月、江蘇省南部に位置する蘇州市（金沢市と1981年6月に姉妹都市提携）に、新たな複合施設「青苔（あおこけ）国際工業デザイン村」がオープンしました。この施設は、2019年8月に内閣府地方創生推進事務局と中国国家発展改革委員会との間で締結された「地方創生の協力の推進に関する覚書」に基づき、6つの「中日地方発展協力モデル区（上海、蘇州、天津、大連、青島、成都）」が指定され始まったプロジェクトの一つであり、約36ヘクタールあるエリアを大きく3区画に分けて開発が進められてきました。今回完成した第1期工事（2020～2023年）区画では日本産品の展示販売施設やレストラン、文化交流、オフィス施設等があります。また、第2・3期工事（2024～2027年予定）ではデザイナーズホテルや図書館、住宅マンション、インキュベーション施設等が出来る予定となっており、日中双方の多様な業種のデザイン設計部門が連携して創作活動をしたり、新たなスタートアップを育成したりといったことも狙いとされているなど、完成が非常に楽しみな施設となっています。

  今回オープンした展示販売施設では、多くの日本産品が展示販売されており、当方から県産品の紹介を積極的に実施した結果、山中漆器や九谷焼等を販売いただいています。これからも継続的に情報発信し、販売アイテム数が増えるよう注力していきたいと思います。

  また、今後、当施設においてジャパンモールなど各イベント等も開催される予定であり、こうした機会を通じて、本県の特産品及び伝統文化の普及を図っていきたいと思います。

■中国における最近の観光需要

  コロナ禍以降、中国国内では国内および海外旅行者数はともに回復傾向にあり、特に国内旅行の急回復は顕著で、全国各地でオーバーツーリズムの様相を呈しております（2023年10月の国慶節大型連休では、2019年比で国内旅行者数が104.1％、海外旅行者数は85%）。

  上海においても、週末になると地方からの観光客で混雑しており、1日あたりの入場者数に制限を設けているディズニーランドや博物館等の施設では、入場予約が取りづらい状況が続いています。国内旅行に比べた海外旅行者数の回復が緩やかな理由としては、中国の景気後退により財布の紐が固くなっていることの表れともとれます。一方で、コロナ禍を経て経済活動やライフスタイル等が変化し、旅行に対するニーズの変化も指摘されていることから、観光客の受け入れ側にとっては、個々の消費者ニーズに合わせてサービス等を提供していくことが、顧客の獲得に必要となっています。

  同程旅行社（中国の大手旅行社）とテンセントが共同で発表した「中国旅行消費トレンド洞察白書（2023）」によると、新しいトレンドのキーワードとして、1.情感的価値、2.ニッチでローカル、3.気まま旅、4.ディープ旅、の4つが紹介されています。1.と2.については、これまでのような消費をするための旅行ではなく、都会の喧騒を離れて非日常を楽しむことによる「癒し」や、触れたことのない文化を「体験」することなどへの欲求が挙げられます。3.は、綿密なプランを立てて余裕を持って事前に予約するというよりも、直感に従って思い立ったら即行動、という傾向を指しています。その証左として、中国の大手旅行予約サイトのデータによると、2023年上半期のサイト利用者のうち、1ヶ月以上前に旅行予約する人はわずか6％となっています（日本人の場合は37％）。推測になりますが、旅行の方面は大体決めておいて、具体的にどこへ行くかは直前にSNSの動画等を見て面白そうなところへ行く、というパターンが多いのではないかと思われます。4.は、農村等へ2週間～1ヵ月程度滞在し、地元の暮らしを体験するというメニューが中国の地方部でも展開され、SNSで話題になっています。

  これら4類型が挙げられていますが、石川県の観光資源を有効に使えば、これらのニーズを満たすサービス等の提供は可能ではないかと思いますので、引き続き、4類型を念頭におき、創意工夫しながら県の魅力発信に努めて参りたいと思います。

（画像1：「青苔国際工業デザイン村」正面入口）

（画像2：県産品の展示販売スペース）

（画像3：オープニングセレモニーの様子（今年1月下旬。写真右から4番目は赤松大使））