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更新日:2021年5月6日

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―上海駐在員便り 2021年2月―

武漢、あれから一年

 

■武漢の今

  2020年12月8日、武漢天河国際空港に降り立ちました。偶然にも、ちょうど一年前、新型コロナウィルス感染者が世界で初めて武漢で確認された日にあたります。空港から市街地へ向かう車窓からは、内陸部特有の白い霧が立ち込め、遠方の高層ビルはうっすらと霞んで見えます。川や湖が多く、面積の約四分の一が水に覆われている土地であることにも起因していると思われます。ホテルに荷物を下ろすと、震源地となった海鮮市場まで約8キロ、シェアリング・エコノミーの代表格として今や中国全土で配備されているシェアバイク(自転車)で向かいます。途中、街は多くの人や車が行き交い、すっかり日常の風景が広がっております。武漢には大学が多く、学生数は約120万人と中国で最も大学生が多い都市ということもあり、繁華街を通ると、多くの若者が買い物をしている様子なども見られ、活気さえ感じられます。コロナ禍では都市が完全に封鎖され、経済活動が2カ月以上に渡り停止していた街とは思えない、復興の速さに驚かされます。スマホのGPSを確認しながら海鮮市場があった場所にたどり着くと、そこは周囲をフェンスで覆われ、現在も閉鎖された状態となっております。(2階に眼鏡屋がぽつんと1軒開店しているのを除いては。)

  なお、私が現在駐在している上海等では夏頃からマスクをしていない人が増えてきましたが、ここではほぼ全員がマスクを着用していることや、洗面所等で入念に手を洗っている様子を見ると、やはり他の地域より人々の警戒感は強いように感じました。また、空港での防疫関連の申請手続や、建物に入る際の「健康QRコード」をチェックされる機会等も比較的多かったように思います。

 

■武漢概況

  武漢は、北京・上海・広州・成都等、主要都市の概ね真ん中に位置し、交通の要衝として発展してきた人口約1,100万人の都市です。鉄道、水運、空路が整備され、4時間以内に中国全土の約8割に到達することが可能です。最近では、武漢新港と大阪・神戸等を結ぶ直通コンテナ船も開業したところです。また、前述の通り、学生数が中国で最も多く、特に優秀な理系人材が豊富です。GDP(2018年)は、湖北省はタイ一国、武漢市はベトナム一国に相当する規模であり、武漢の主要産業といえば自動車産業です。日系ではホンダや日産などの大手メーカーも進出しております。加えて、近年では5GやAIなどのハイテク産業の拠点ともなっており、コロナ対応にもこれらの最新技術が一役買っております。例えば、武漢の「火神山病院」は10日で完成したことで有名ですが、人工衛星「北斗」の活用による測量技術があってこそ可能です。また、当時、院内では5Gネットワークによる遠隔医療も導入されておりました。

 

■湖北省及び武漢市政府

  12月9日から11日にかけて、日本の駐中国自治体事務所の代表団として、湖北省政府や武漢市政府、宜昌市政府、現地進出企業等を訪問し、趙副省長や各副市長等との面会及び視察を行いました。代表団は、石川県を含む18の自治体事務所、日本貿易振興機構(JETRO)武漢事務所、日本国自治体国際化協会(CLAIR)北京事務所で構成されました。

   湖北省及び武漢市両政府は、「2020年のGDPは、都市封鎖された第1四半期は地域経済が大きな打撃を受けマイナスとなったものの、第2四半期にはすでに前年並みとなり、第3四半期にはプラス成長に転じ、第4四半期は更に目標に向けて成長を続けている」と経済復興が進んでいることを強調しておりました。同時に、「3カ月で新型コロナウィルスの封じ込めに成功し、現在も防疫対策を緩めることなく継続している」と都市の安全性をアピールしておりました。

  実際に、実施している防疫対策は生半可ではありません。PCR検査ひとつとっても、5月に全市民に対し1,000万人規模で検査を実施したことも記憶に新しいところですが、12月19日に武漢市衛生健康委員会が発表したところによると、市内の2級以上の医療機関は全てPCR検査部門を持つ状態となり、1日当たりのPCR検査能力が通常体制で35万人分、緊急時には150万人分以上にまで拡大可能になりました。また、市政府の話では、現在もゴミや下水道等、5~6,000個所のサンプリング検査を続けているとのことです。私は普段上海におりますが、出張の際等に陰性証明を求められる機会が度々あり、再び中国に入境してから約半年ですでに6回のPCR検査(すべて陰性)を受けています。良し悪しは別として、日本の「WITHコロナ」と中国の「ZEROコロナ」の考え方が根本的に異なっていることを体感する日々です。

 

■現地進出企業

  東風本田汽車(ホンダ)の谷内副総経理(現地の副社長)によると、都市封鎖されてから1カ月半の間生産・販売が停止したものの、3月半ばには操業を再開し(武漢の企業としては早い)、1カ月後には正常化、7~11月には昨年を上回る販売実績となり、現在は3つの工場でフル生産している状況とのこと。コロナ禍においても約1万4千人の雇用を継続し、関連企業やその家族を含めると関係者は更に多く、日系企業が少なからず現地の経済回復に寄与していることが伺えます。

  また、現地で3店舗を展開しているイオンモール湖北の酒井総経理(現地の社長)によると、都市封鎖時においても、食料品等を扱うスーパーは社会インフラの一部として一日も休まずに営業を続け、市民から大変感謝されたとのこと。そしてこのことが後に企業のブランディングにも繋がった側面もあるようです。この話を聞いて、私はコロナ感染拡大真っ只中にあった頃の上海での出来事を思い出しました。2020年1月下旬から2月上旬にかけ、春節も重なり、ほとんどの店が閉まっており、外には人っ子一人いないような状況にあったとき、食料調達の不安もありました。そんな中、日系スーパーのAPITAが開いており、一部品薄な状態はあったものの最低限の食料等を確保できたときは、本当にほっとしました。武漢のイオンはきっと、現地の中国人はもちろん、日本人駐在員の方々にとってはなおのこと生活に安心をもたらす存在なのだと思います。

  なお、消費市場としても成長を続ける武漢において、毎年売上が増加しているイオンモールは、さらに3店舗増やす計画とのことです。

 

■おわりに

  新型コロナでマイナスイメージがついてしまった感のある武漢ですが、冷静に現状をみると、(まだ予断を許さないものの)徹底したコロナ対策により急速に経済復興が進んでおり、特に石川県の中国進出企業は自動車部品関連の企業が多いため、自動車産業都市である武漢の動向は引き続き注視していきたいと考えております。

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(写真1:漢口駅)

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(写真2:武漢市内の様子)

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(写真3:湖北省政府副省長との面会)

お問い合わせ

所属課:商工労働部産業政策課 

石川県金沢市鞍月1丁目1番地

電話番号:076-225-1511

ファクス番号:076-225-1514

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