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更新日:2023年12月1日

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―上海駐在員便り 2023年12月―

“名酒の郷“ 宿遷

  江蘇省北部に位置し、上海から高速鉄道で3時間半の距離に宿遷市(しゅくせんし)という都市があります。ここは、かつて古代中国で秦を滅ぼす戦いで活躍し、後にライバル劉邦との闘いで「四面楚歌」となってしまうことでも有名な武将項羽の出生地でもあり、現在の人口は590万人ほどの地域です。この宿遷市とは、県国際交流事業の要の一つである「21世紀石川少年の翼」において、今年度高校生8名を同市から派遣して頂いたことで交流が始まり、来年度は県からの派遣団を受け入れていただく予定になっております。そうした繋がりから、同じく同市と関係を持つ鹿児島県上海事務所駐在員(南さつま市が宿遷市と姉妹友好都市)とともに現地を訪れ、日系やローカル企業の訪問及び施設見学等を行って参りました。

  宿遷市には、中国全土で高いシェアを誇る大手食品企業や、自動車部品メーカーの進出が進んでいます。日系企業はまだ片手で数えるほどですが、ローカルも含め、これら企業では健康食品の品揃え拡充、環境配慮型設備システムの構築や人材雇用に工夫を凝らしている様子が窺えました。例えば、調味料メーカーでは、添加剤不使用のものを重点開発している他、容器の瓶から再生PETへのシフトを進めています。また自動車部品メーカーでは、金属加工で使用する切削油のリサイクル利用、太陽光発電による蓄電池の利用(夜間貯めて昼に使用)によりコスト削減を実現していたり、従業員の技能(フォークリフト、溶接、メッキ、日本語等)毎に社内独自の資格制度を設けて昇給に反映させるとともに、スキルマップを工場内に掲示して見える化し、モチベーションアップにつなげています。別のメーカーでは、妊婦が休憩する専用スペースを設けるといった配慮も見受けられました(中国では、法令で妊娠7ヶ月以上の女性従業員には、一定の休憩時間を付与するよう規定)。そして、工場が立地するエリア周辺では、工場の前で「人員募集  時給〇〇」という求人看板を掲げている人の姿も多く見受けられました。景気後退等により若者の働き口がなかなか見つからない上海周辺ではなかなか見られない光景です。開発や企業進出がこれからで、市民の大半が大都市へ出稼ぎにいくエリアと、上海のように成熟した都市との需給の実態の違いを感じた一コマでもありました。

  そして、「酒の街宿遷」の代名詞的存在であり、中国を代表する白酒メーカーの一つである洋河酒造(ようがしゅぞう)を訪問しました。白酒(baijiu)とは、中国の伝統的な蒸留酒で、コーリャン(高粱)など穀物を原料に作られるアルコール度数50~60%程度のお酒です。中国の宴席では乾杯の際などによく出され、小さなコップに注いで一気に飲み干す、というのがいわば慣習になっています。中国では、酒席での交流がビジネス上重視されることも多く、赴任経験のある方は、高アルコール度の白酒で幾度も乾杯を重ねた経験がある方も多いのではないでしょうか。この白酒の代表的な銘柄「洋河大曲」を製造しているのが洋河酒造であり、国内にあるいくつかの拠点のうち、本社およびメイン工場がここ宿遷にあります。その工場に到着して車から降りた瞬間、ぶわっと芳醇なお酒の香りが鼻を突き、そこがもはや別世界であるかのような感覚になりました。工場のメイン建屋の入り口前には巨大な酒樽のモニュメント(約10万ℓ収容)があり、すかさずその前で記念写真をパシャリ。工場総面積は10㎢(東京ドーム210個分)、従業員数3万人、2022年売上高は6千億円で、これまで見てきた酒蔵やワイナリー、ビール工場とは桁違いなスケールに、ただただ圧倒されるばかりでした。工場建屋は、自動化製造ラインと人が製造管理するラインに分かれており、自動化では文字通り人はほとんど介在せず、ロボットと制御盤に表示される数字やグラフだけが目に入ってきます。製造したものは約20年間倉庫で保管された後、国内及び海外市場へ出荷されていきます。この工場のユニークな点として、訪問者は「アルコール耐性テスト」なるものを受けることもできます。PCR検査のように綿棒を口の中に入れて唾液を採取し、検査に回して数時間後に結果が返ってくるというもので、仕組みは専門的なので詳細分かりませんが、体内に含まれるアルコール脱水素酵素(alcohol dehydrogenase)の量や種類等を分析することにより「どのくらいの量が飲めるか、顔に出るか、アルコールの代謝スピード」といった分かりやすい指標を確認することができます。ご自身のアルコール耐性についてはよく自覚されているかとは思いますが、数字等で確認できる機会はなかなかないのではないでしょうか。

  最後に視察した市経済開発委員会が進める開発区では、先端技術や次世代材料等の研究開発拠点の建設が進められており、間もなく一期目の工事が完了しようとしているところでした。担当者の話では、ここに日系企業ゾーンも作る予定であり、進出企業には3年間の家賃免除、税金免除、設備資金への助成金など各種支援策を揃えているとのこと。もしここで新たなビジネスの立ち上げや研究開発を始めるとすれば、地元政府等からの手厚い支援が期待できそうです。

  日系企業や在留邦人の数はとても少ないですが、大都市圏と高速鉄道で数時間の距離にあり、まだまだ発展の可能性を秘めている宿遷市のような地域が、10年後、20年後にどのような姿になっているのか、とても興味深いものです。

(画像1:洋河酒造のメイン建屋前にて)

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(画像2:洋河酒造の自動化製造ライン)

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(画像3:宿遷市政府との意見交換会)

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お問い合わせ

所属課:商工労働部産業政策課 

石川県金沢市鞍月1丁目1番地

電話番号:076-225-1511

ファクス番号:076-225-1514

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