緊急情報

閉じる

現在、情報はありません。

印刷

更新日:2023年9月1日

ここから本文です。

―上海駐在員便り2023年9月―

中国における電気自動車市場

  上海では、もはやエンジンを積んだバイクを見かけることはなく、街中を走るのは全て電動スクーターになっていますが、自動車においても電動化が急速に進んでいます。2022年の国内自動車販売数2,700万台のうち690万台が新エネルギー車※(以下、新エネ車)で、市場における新エネ車の占める比率は、ここ5年間で4%から26%まで上昇しています。日本においても、2022年6月に軽EVの日産「サクラ」が販売開始されたのを追い風に、同12月のPHEV・EVの販売比率が過去最高の4%を記録し、2022年通年の販売台数は9万台を超えるなど徐々に広がりを見せておりますが、やはり中国の市場拡大のスピードは際立っています。

※新エネルギー車とは、中国独自の定義で「新型動力システムを採用し、完全に、または主に新エネルギーによって駆動される自動車」とされる。具体的には、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)が含まれ、ハイブリッド車(HV)は含まれない。

  中国では、乗用車のナンバープレートは基本的に青色ですが、新エネ車は緑色のナンバープレートを付けているため、どれほどの数が走っているかは一目瞭然です。感覚的になりますが、上海は他都市に比べても緑色ナンバーの割合が多く、配車アプリでタクシーを利用する際も、だいたい2回に1回以上は新エネ車に当たります。FCVは今のところほぼ商用利用に限られているため、メインとしてはEVまたはPHEVになりますが、日本ではまだ少数派の新エネ車がなぜ中国ではたくさん走っているのか。様々な側面がありますが、政府の購入支援策やメーカーの研究開発に拠るところが大きいと考えられます。

■政府による補助政策、ナンバープレート取得

  国主導の個人所有に対する大規模な補助政策が2010年から始まり、新エネ車の普及を後押ししました。当初はバッテリー容量によって補助金額が決められ、およそ1台当たり80万円~110万円程が国からメーカーに支給される仕組みになっており、これに市政府の補助やメーカー独自のキャンペーン等が上乗せされました。しかし、国の補助は年々削減され、直近では航続距離に応じた計算方法に変わるなどし、金額も1台当たり18万円~40万円ほどになり、そして2022年末をもって国の補助政策は終了となりました。一方、補助金以外の施策として減税策が講じられており、一般車に対して10%の汽車購置税(自動車取得税に相当)がかかるところを新エネ車は免除され(1台当たり約60万円が上限)、徐々に減税幅は削減されるものの、2027年末まで継続されることが発表されています。

  また、新エネ車への優遇措置は、ナンバープレート発給の際にも適用されてきました。中国では、大都市を中心にナンバープレートの発給枚数に制限をつけており、さらに競売か抽選という方法でしか入手できず、日本のように申請すれば誰でもナンバープレートが取得できるわけではありません。上海では、月1 回のネットオークションによる落札方式となっており、落札額は都度異なるものの、直近の平均落札額は約180万円と、とても高額になっています。さらに、落札率は11%ほどのため、自動車購入のハードルは高いものとなっていますが、これが新エネ車に対しては適用されず、購入者にはほぼ自動的にナンバープレートが付与さるという大きな恩恵を受けることができます。

  減税等の優遇措置は継続されますが、国主導の補助政策の終了は大きな転換点の一つになりますので、今後のメーカーの戦略や市場動向が注目されます。

■中国メーカーの台頭

  2023年1~4月における、国内の新エネ車販売台数上位10社のうち7社を中国メーカーが占めており、合弁を除く海外メーカーはTeslaのみとなっています。そのTeslaも直近のシェアは7%ほどで、約200万円~400万円の価格帯を攻めるBYDやAIONといった中国の新興勢に押されているような状況です(同期間のBYD、AIONのシェアはそれぞれ38%、10%)。

  トップ10に入っていない欧米や日本のEVの多くが、ガソリンエンジン車をベースに開発されているのに対し、中国勢は最初からEVとして設計しているため、よりシンプルに、既存の枠にとらわれない自由なデザインに仕上げているような印象を受けます。例えば、車の「顔」ともいえるフロントグリルは、内燃機関を持つ車には冷却のための大切な装備になりますが、モーター駆動のEVにはその必要がないため、よりフレキシブルに仕立てられます。内装においても、従来のメーターパネルや空調スイッチ、シフトレバーといった定番のものや配置等にこだわらず、極力無駄をそぎ落とすとともに、可能な限りタブレット端末で完結するというシンプルさを追求しているように思われます。従来のユーザー(特に車好きの方)からすると違和感を覚えてしまうかもしれませんが、中国の若者や女性にとっては、この新しく先端的なデザインこそがおしゃれであり、メーカーもその購買層を意識した設計開発を進めているように感じます。また、将来的な自動運転走行も見据え、各種センサー群も車種に限らず導入されているところも見逃せません。

  中国製EVの日本市場への進出も始まっていますが、世界市場へ向けて今後どのような展開を見せるのか、個人的にも楽しみにしています。

 

(写真1:新エネ車の外観デザイン)

230901

(写真2:内装デザイン)

230902

(写真3:ルーフ(屋根)上にセンサー群を搭載)

230903

お問い合わせ

所属課:商工労働部産業政策課 

石川県金沢市鞍月1丁目1番地

電話番号:076-225-1511

ファクス番号:076-225-1514

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報はお役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?

同じ分類から探す