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江戸末期~昭和50年代
白山市(石川県立白山ろく民俗資料館管理 白山市白峰リ28-1)
〔出作り民家〕
〔生活用具〕
県指定有形民俗文化財 平成16年1月30日指定
白山麓の白峰地区は全国屈指の豪雪地域であり、昭和30年代までは出作りによる焼畑農業に依存する山村生活が営まれてきた。出作りは冬季に山を降りる季節出作りと山中に越冬する永住出作りに大別されるが、旧長坂家は後者であった。
僻地のうえ豪雪の山中に孤立するため、旧長坂家は生業・生活全般に関わる多くの用具を備えてきた。なかでも特徴的なものは、焼畑用具、養蚕用具、除雪具・カンジキなど雪に関する用具である。また、カゴやシャクシなど出作り民家の周辺で採取した植物の特性を活かし、巧みに工夫した自家製品が種類・数量ともに多く、山村生活の知恵を端的に表している。さらに、用具の制作年代は江戸末期から昭和50年代と幅広く、用具を大切に扱う暮らしぶりや出作り生活の歴史を伝えている。
旧長坂家は、明治6年(1873)に白山市白峰河内谷苛原(標高約750m)に建築されたと伝えられるが、それを昭和62年(1987)に旧白峰村役場が解体移築したものである。母屋は間口4間、奥行き7間半、木造の三階建で、入母屋の茅葺き屋根である。太い柱や梁を頑強に組み、外壁を厚く塗り込んだうえに、外周をツカセと呼ばれる5本の控え柱で支え、耐雪・防風効果を高めている。
母屋1階のジロ(囲炉裏)は焼畑で収穫したアワやヒエを効果的に乾燥させるため大型化されており、板敷きも作業に耐え得るよう分厚くされている。2階と3階では養蚕を行ったが、春蚕へ低温を避けるためジロの上部を竹簀にし、暖気が2階と3階へ回るよう工夫されており、また夏蚕への高温を避けるため2階には通気用の小窓が設けられている。
この民家は、豪雪・強風・一軒家という厳しい環境に耐え、さらに焼畑農業や養蚕を営む出作り生活者の力強さを、堅牢にして細部に行き届いた建築に如実に表している。また、数多く存在した白峰の出作り小屋の中でも大規模な自作農の代表的な建物である点が重要である。
以上のことから、旧長坂家の山村生活用具と民家(母屋及び母屋に併存するセンジャ(便所)と蔵)は、白峰の出作り生活を総括的に伝えるものとして貴重であることを認め、有形民俗文化財に指定し、その保存を図るものである。
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