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更新日:2010年8月24日

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1.地域材を利用した高信頼性構造用材の開発(第1報)

予算区分      国補
研究期間      平成10~14年度
担当科名      木材加工科
担当者名      鈴木  修治・小倉  光貴

I.研究目的

  近年、建築・住宅分野において工法や使用材料の面で大きく変化している。特に阪神・淡路大震災以降一般においても建築物の耐震・構造強度について関心を集めることとなり、木質構造物の強度性能について種々検討が行われるようになった。
  本課題では、従前より行ってきた構造用材料の性能評価の結果を踏まえ、スギを主とした県産材による横架材の軽量化と構造用面材料の開発を主眼に試作・検討を行い、構造体まで含めた性能評価を通じて木質材料および木造建築物についての信頼と認識を高めることを目的とする。

II.本年度の試験内容

1.エレメントの製造技術開発

(1) 断面形状とエレメント構成の検討  

  断面形状と曲げ強度性能の関係についての知見を得るため、縮小モデルによる実験を行った。
  外寸40×40mmの集成材(中実)、箱形梁(中空)、I型梁のモデルを作成し、JIS-Z-2101に準じてスパン560mmで曲げ試験を行った。

(2) エレメントの配列と接着方法の検討

  接着力に及ぼす繊維方向の影響を検証するため、2層のスギ板の繊維方向を角度をもたせ、JIS-K-6815に準じて引っ張り試験を行った。接着剤はAPI(水性高分子イソシアネート系接着剤、以下同)を用い、2層の板の繊維方向と引っ張り荷重のなす角度は0-0,0-45,0-90,45-45,90-45,90-90の6条件とした。

2.構造用材の製造と性能評価

(1) 微小湾曲による曲げ性能改善効果の検討

  集成材の積層・接着時に僅かに湾曲をかけることにより、垂直荷重に対する撓み性能の改善効果について検討した。
  1(1)における集成材と同断面でf=L/60ライズをかけて同様の曲げ試験を行った。また、両端を拘束した状態で垂直集中荷重を負荷した場合の性能と挙動についても検討した。この場合は水平反力を考慮してf=L/20とした。

(2) 接着・接合方法の検討と性能評価

  箱形梁におけるフランジとウェブの接合法を検討するため、クギ、木ネジおよび接着剤(API)による接合の引っ張り荷重に対するせん断力、引き抜け抵抗を測定した。
  試験片はヒバ厚板とスギ合板を用い、繊維方向に荷重する場合と繊維に直角方向に荷重する場合について検討した。

III.結果

1.エレメントの製造技術開発

(1) 断面形状とエレメント構成の検討

  箱形梁、I型梁は集成材との比較で、曲げ強さが15%、曲げヤング係数が10%それぞれ低下したが、単位重量は25%軽減されていることから、単位重量当たりの性能は高いと考えられる。破壊は木部で発生しており、梁背の大きさに伴ってせん断力も増加するので、せん断耐力の大きな材料をウェブに用いる必要がある。

(2) エレメントの配列と接着方法の検討

  すべての条件において木部破断率が100%であった。これより、接着力に及ぼす繊維方向の影響は引っ張り荷重に関してはないと考えられる。

2.構造用材の製造と性能評価

(1) 微小湾曲による曲げ性能改善効果の検討

  JISに準拠した曲げ試験の結果、湾曲材と通直材の曲げ性能に差は認められなかった。しかし、両端を拘束した場合には曲げ強さが13%、曲げヤング係数が27%それぞれ向上した。この場合、端部に約40Mpaの水平反力が発生しており、一部に端部木口の圧壊が認められた。

(2) 接着・接合方法の検討と性能評価

  繊維方向の接合力はクギ1に対して木ネジ2であった。この結果は計算により導かれるせん断耐力と引き抜き抵抗値の合算値にほぼ符合している。APIによる接着の場合はすべて合板側で破壊し、せん断強さは約1.4Mpaであった。
  繊維と直角方向の荷重に対してはすべて厚板の割裂により破壊が生じた。クギと木ネジの接合力の差は約20%と小さいが、APIによる接着の場合は木ネジの約180%(単位長さ換算)であった。また、破断位置はクギ、木ネジの場合は打ち込み位置で割裂したが、接着の場合はほぼ中央部で割裂した。したがって、繊維と直角方向荷重の場合は、接合耐力より主材の横引っ張り強度に支配され、列状にクギ等を打ち込むことにより割裂し易くなり、横引っ張り強度が著しく低下したと考えられる。

 

お問い合わせ

所属課:農林水産部農林総合研究センター林業試験場

石川県白山市三宮町ホ1

電話番号:076-272-0673

ファクス番号:076-272-0812

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