被災地での片づけ作業時等における注意点について(外傷・粉じん・感染症など)
災害により倒壊した家屋の片づけ作業等の際には、外傷や粉じんへの暴露、感染症など様々なリスクがあります。以下について注意し、マスクや長袖・長ズボンの着用などの対策をしましょう。
破傷風とは?
- 釘の踏み抜き等による傷口から、破傷風菌が感染することで発症します。
- ヒトからヒトへ感染することはありません。
- 感染してから3日~3週間の潜伏期間の後に、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛い、などの症状が現れます。
- 症状が進行すると、体のしびれや痛みが全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢を伴う呼吸困難により、死亡することがあります。
- 家屋の片づけ作業等の際には、木材などから飛び出ている釘を踏まないように足元に注意しましょう。
破傷風を防ぐには?
- 釘の踏み抜き防止のため、安全靴や踏み抜き防止インソールなどを着用しましょう。
- ワクチン接種が重要です。
- ワクチン接種により、100%近い方が十分な抗体を獲得すると報告されています。
生年月日 |
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1967(昭和42)年 以前生まれの方 |
・定期接種として破傷風ワクチンを接種していない年代のため、基礎免疫として3回接種を推奨します。(1回目と2回目は1カ月以上、2回目と3回目は6カ月以上間隔を開けて)
・その後、破傷風暴露リスクが高い場合は、10年毎の接種を推奨します。
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1968(昭和43)年 以降生まれの方 |
・定期接種として破傷風ワクチンを接種している年代のため、基礎免疫はあると考えられます。
・ワクチン接種から10年以上経過している場合は、追加接種(1回)を推奨します。
・その後、破傷風暴露リスクが高い場合は、10年毎の接種を推奨します。
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石綿とは?
- 天然の鉱物繊維で、熱に強く、丈夫で変化しにくいという特性を持っています。そのため、建築工事において建材や保温断熱目的などで使用されてきましたが、その危険性から、現在では製造・使用ともに禁止となっています。
- 震災により倒壊した家屋に石綿が使用されている可能性があるため、片づけ作業等の際に発生した粉じん中に、石綿が含まれている恐れがあります。
- 石綿を吸い込んでしまい肺に入ると、肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫(悪性の腫瘍)、肺がん等の病気を引き起こす恐れがあります。
- 作業時には、石綿を吸い込まないように対策することが重要です。
石綿を吸い込まないためには?
- 防じんマスク(DS2マスク、N95マスク、FFP2マスク等)の着用を推奨します。
- ハンマーでの破砕やカッターでの切断など、粉じん(石綿を含んでいる恐れがあります)を発生させる作業をむやみに行わないようにしましょう。
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真菌症とは?
- 家屋の片づけ作業等により発生した粉じん中に含まれる真菌(カビ)を吸い込むことで、発症します。
○ クリプトコッカス症(髄膜炎など) などを引き起こします。
- 作業時には、真菌(カビ)を吸い込まないように対策することが重要です。
真菌症を予防するためには?
- 防じんマスク(DS2マスク、N95マスク、FFP2マスク等)の着用が有用です。
- 喘息などの持病がある場合には、吸入薬剤などの治療薬を必ず携帯し、適宜使用することにより発症を予防しましょう。
- 家屋等での作業後に、息切れ、咳、鼻汁、発熱、リンパ節腫脹などが見られた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。その際、粉じんに暴露したことを医師に伝えることが重要です。
ダニ媒介感染症とは?
- 病原体を保有するダニ(マダニ・ツツガムシなど)に咬まれることで、感染・発症することがあります。
○ 重症熱性血小板減少症候群(SFTS):マダニに咬まれてから6日~14日後に、発熱、全身倦怠感、消化器症状(腹痛・嘔吐・下痢など)、筋肉痛、神経症状、リンパ節腫脹、出血症状などにより発症します。
○ 日本紅斑熱:マダニに咬まれてから2日~8日後に、発熱、発疹(四肢末端部)、刺し口、頭痛、全身倦怠感などにより発症します。
○ ツツガムシ病:ツツガムシ(ダニの一種)に咬まれてから5日~14日後に、発熱、発疹(顔面、体幹部)、刺し口、全身倦怠感、食欲不振、頭痛、悪寒などにより発症します。
- 家屋の片づけ作業等の際には、マダニに咬まれないように対策することが重要です。
マダニに咬まれないためには?
- 長袖・長ズボン、足を完全に覆う靴、帽子、手袋を着用し、首にタオルを巻く等、肌の露出を減らしましょう。
- 服は、マダニを目視で確認しやすい明るい色のものを着用しましょう。
- 必要に応じて、忌避剤(虫よけ剤)を使用しましょう。
マダニに咬まれてしまったら?
- マダニに咬まれた場合は、医療機関(皮膚科など)を受診し、適切な処置を受けましょう。
- マダニに咬まれた後2週間程は、体調の変化(発熱・発疹など)に注意しましょう。
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ノミ・シラミが媒介する感染症とは?
- ノミやシラミは、吸血時に病原体を含んだ糞便を排泄します。刺し口あるいは引っかき傷などに、糞便やノミ・シラミが入り込むことによって感染・発症することがあります。
○ 発疹熱:ネズミノミに刺されて7日~14日後に、発熱、頭痛、皮疹、関節痛、咳などにより発症します。
○ 発疹チフス:コロモジラミに刺されて6~15日後に、高熱(39℃~40℃)、頭痛、背部痛、下肢の筋肉痛を伴って発症します。
- 家屋には、ノミやシラミが生息している可能性がありますので、片づけ作業等の際には注意しましょう。
ノミ・シラミが媒介する感染症を予防するためには?
- 予防のために、家屋の片づけ作業等の後には、お風呂に入り、衣類の洗濯を行いましょう。
- 衣類は、60度以上のお湯に10分以上つければ、卵を含め殺虫することができます。
- 作業後に、発熱や頭痛などの症状が見られた場合は、医療機関を受診しましょう。
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熱中症とは?
- 熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。めまいや吐き気、頭痛等が起こり、最悪の場合は死亡することもあります。
- 今後、夏場にかけてさらに気温が高くなります。家屋の片づけ作業時等の際には、熱中症にならないための対策をしましょう。
熱中症を予防するためには?
- 日中など、気温が高い時間帯の作業は避けましょう。
- 作業を開始する前には、必ず体調を確認し、体調が悪い時には作業はしないようにしましょう。
- できるだけ2人以上で作業を行い、作業中は声をかけ合うなどお互いの体調を確認するようにしましょう。
- 作業時には、帽子や吸湿性・速乾性のある通気性のよい衣服などを着用しましょう。
- 一定時間毎に日陰などの涼しい場所で休憩をしましょう。休憩時は、のどが渇いていなくてもこまめに水分・塩分をとるようにしましょう。
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ハチ(蜂)・毒蛇の危険性
蜂刺症(はちししょう)とは?
- 年変動があるものの、毎年30~40名が蜂刺症の犠牲となっており、7月~9月に患者が集中しています。
- 蜂に刺されることで、ハチ毒アレルギーによるアナフィラキシーショックを発症し、死亡することがあります。
- 蜂刺症を引き起こす蜂類としては、スズメバチ、アシナガバチ、ミツバチ、マルハナバチ等が知られています。
蜂刺症の対策は?
- 家屋の片づけ作業等の際に、ハチに遭遇した場合、大声で騒いだり、腕でハチを追い払う行為は厳禁です。姿勢を低くして、ハチと巣から速やかに離れましょう。
- ハチ毒アレルギーの既往がある場合は、アナフィラキシー反応が出現したときの緊急補助的治療として使用するエピペン(アドレナリン自己注射薬)を主治医から事前に処方してもらい、すぐに使用可能としておくことを推奨します。
- ハチに刺された後に、しびれ感、口唇の腫れ、気分がすぐれない、吐き気、嘔吐、腹痛、じん麻疹、咳込み等が見られた場合は、早急に医療機関に相談し、症状が重い場合は救急車を利用しましょう。
毒蛇咬症(どくじゃこうしょう)とは?
- 国内におけるマムシ咬症の発生件数は、年間推定3,000件ですが、死亡件数は一桁にとどまっています。
- 家屋の片づけ作業等の際にヘビに咬まれた場合には、咬んだヘビの特徴を覚えておくと、その後の治療に役立ちます。
- 咬まれた部分の腫れが短時間で広がったり、息が苦しくなったり、意識が遠のくなどの症状がある場合は、救急車を呼ぶなどして、急いで病院に行きましょう。
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