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更新日:2022年6月21日

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「石川県白山自然保護センター研究報告」(第48集)要約

論説

「白山南竜ヶ馬場とその周辺におけるハクサンオオバコ個体群の現状」

佐野沙樹・関根万里菜・中山祐一郎・柳生敦志・稲葉弘之・野上達也

南竜ヶ馬場とその周辺において、2016年8月23日~25日にドローンによる航空写真の撮影と現地調査を行ってハクサンオオバコの生育適地面積を算出したところ,南竜庭園では2,483 m2,柳谷では3,213 m2,曲山では488 m2であった。これらの生育適地面積にハクサンオオバコの個体密度を掛けて算出した個体数の推定値は,南竜庭園では280,916個体,柳谷では365,742個体,曲山では38,015個体となった。また,TWINSPANによって7つの植生グループが区分され,ハクサンオオバコの含まれる植生が生育地によって異なることが示された。以上から,南竜庭園,柳谷および曲山には,それぞれ特徴の異なる規模の大きなハクサンオオバコの個体群が現存することが明らかとなった。一方,南竜ヶ馬場の野営場では,ハクサンオオバコとオオバコとの雑種が繁殖してハクサンオオバコと戻し交雑している可能性が遺伝子マーカーによる調査で示された。ハクサンオオバコの保全のためには,野営場の一部を無植生の裸地として管理することを検討しても良いと考えられた。

「白山南竜ヶ馬場とその周辺におけるハクサンオオバコ個体群の現状」(PDF:1,753KB)

「リタートラップによるブナ・ミズナラの雄花序落下量と着果度調査の検証」

八神徳彦・小谷二郎

秋のクマの出没傾向を予測する雄花序落下量調査と着果度調査の予測精度の向上を目指し、調査方法の検証を行った。ブナとミズナラについて2017年から2021年に、白山市白峰(六万山)のミズナラ林とブナ林においてリタートラップを設けて、毎月落下した雄花序および堅果を採取して、両者の落下量の関係を解析した。この結果、雄花序落下量調査だけでは作柄が過大に評価されることもあったが、着果度調査では作柄の評価の格差を少なくすることができた。また、ブナでは結実の多いときは着果度調査でも過大評価することがあるので、落下堅果の健全具合を見てさらに修正することが望ましいと思われた。

「リタートラップによるブナ・ミズナラの雄花序落下量と着果度調査の検証」(PDF:336KB)

「石川県のブナ科樹木3種の結実予測とツキノワグマの出没状況、2021」

八神徳彦・野上達也・伊丹えつ子

ツキノワグマ出没予測のため、主要な餌となるブナ、ミズナラ、コナラの雄花序落下量と着果度を観測することにより結実予測を行った。調査はクマの多い加賀地方を中心に、各樹種20~30か所程度で行った。その結果、5月~6月に実施した雄花序落下量調査では、県内全体としてブナは並作、ミズナラは豊作、コナラは並作と予測された。また、8月に実施した着果度調査では、県全体としてブナは大豊作、ミズナラは豊作、コナラは並作と予測された。標高の高い地域に生育するブナ、ミズナラの作柄が良いことから、秋期にツキノワグマの出没は多くない予測された。クマの出没は231件と昨年の869件に比べ大きく減少した一方、夏期の出没は減少しておらず、里山での定着が危惧された。

「石川県のブナ科樹木3種の結実予測とツキノワグマの出没状況、2021」(PDF:841KB)

「中宮展示館周辺におけるゴミムシ類の種構成」

平松 新一(白山自然保護調査研究会)

中宮展示館周辺のブナ林,ミズナラ林,オニグルミ林,林縁草地,草地,河原の6生息地で2016年の春から秋にかけてゴミムシ類を採集し,種構成および季節変化について検討した。河原では,最優占種であるノグチアオゴミムシLithochlaenius noguchiiが他生息では全く記録されないなど,種構成が他環境と明らかに異なっていた。一方,河原以外の環境では,コクロツヤヒラタゴミムシSynuchus melanthoなどの森林に多い種,コゴモクムシHarpalus tridensなど草地や農地などの開けた環境に出現する種,コガシラナガゴミムシPterostichus microcephalusのようにそれら両方の環境に出現する種と,様々な環境嗜好性を持つ種が確認された。これらのことは,中宮展示館周辺には多様な環境があり,それらが豊富なゴミムシ相を支えていることを示唆している。さらに,全てのサイトで5月から7月までと8月から10月までの種構成が異なっており,採集された種の活動が季節によって変化していることが推測できた。

「中宮展示館周辺におけるゴミムシ類の種構成」(PDF:653KB)

「自動撮影カメラによる白山の亜高山帯(楽々新道)におけるニホンジカの侵入段階調査の試み」

北市仁・近藤崇

石川県におけるシカの生息数は隣県と比較しても低いものの、これまで白山においては亜高山帯(標高1,600~2,400m)においてもシカが目撃されることがあった。今後個体数が増加すれば白山に生育する高山植物等にも被害が懸念されるものの、白山においてシカの情報等は限られており、更なる情報集積が求められる。以上のことから、2020年および2021年の夏期に、白山の亜高山帯を通る楽々新道沿いに自動撮影カメラを2台設置し、ニホンジカの侵入段階の調査を試みた。その結果、2020年に9回、2021年に8回ニホンジカが撮影され、撮影されたシカはすべてオスであった。このことから白山の楽々新道沿いにおける侵入段階は、オスの先行的な分散時期であると考えられた。他地域の事例を鑑みると、今後は白山においてもシカの個体数の増加が懸念されるため、早期の対策が急がれる。

「自動撮影カメラによる白山の亜高山帯(楽々新道)におけるニホンジカの侵入段階調査の試み」(PDF:999KB)

「登山道における能登ヒバ材工作物のクマ被害について(中間報告)」

宮崎顕治

クマによって登山道など山地に設置する標柱・案内板などがかじられ、管理上の問題となることがあり、前回、医王山での無垢の能登ヒバ材工作物のクマ被害状況について報告した。今回は、被害の調査範囲を白山エリアにも拡大し、また、再現性調査地点を6地点に増やし、併せて同地点に自動撮影カメラを設置した。その結果、過去の被害はもちろん、2021年はかじられる被害が頻発する年となったことが分かった。また、全ての再現性調査地点でかじられる被害が確認された。さらには、自動撮影カメラで能登ヒバ材をかじるものの、比較のため設置したスギ材には興味を示すものの、かじることが無かったことが撮影された。

「登山道における能登ヒバ材工作物のクマ被害について(中間報告)」(PDF:1,492KB)


「自動撮影カメラで確認された金沢市夕日寺健民自然園のハクビシン」

野上達也

2020年7月~2021年12月に、金沢市にある夕日寺健民自然園の遊歩道沿いや園地に設置した自動撮影カメラによる調査で確認されたハクビシンについて、調査結果を取りまとめた。時刻別には夜間(19時~5時)が、224例中223件(99.6%)、その他の1例も18時台で、ハクビシンは完全夜行性とされているとおりであった。また、月別には、2020年は7~9月、2021年は5~7月の夏季の撮影数が多く、冬季の撮影数は少なかったが、撮影数のピークは年によって、また、調査地点によっても違いが見られた。その他、ハクビシンがペアで観察されたのは、2020年10月、2021年6~7月で、そのうち、2021年6月8日と23日には、交尾の様子が記録されたので、その動画をインターネット上で公開した。ハクビシンの繁殖生態には不明な点が多く、多雪地である北陸での繁殖生態がどうなっているのか、今後も調査を行っていく必要がある。 

「自動撮影カメラで確認された金沢市夕日寺健民自然園のハクビシン」(PDF:792KB)

「金沢市のニホンザルの群れ分布と農業被害の拡大経過について」

大井 徹・小川 弘司・北市 仁

石川県のニホンザルによる農業被害は,令和元年度まで年数十万円程度であったが,令和2年度には600万円を超した。これは,サルの分布が拡大した金沢市,白山市などでの被害金額の増加が原因であった。しかし,金沢市の群れの生息実態はほとんど不明であった。そこで,群れにGPS首輪を装着し行動圏と群れの分布を調査した。その結果,金沢市には少なくとも6群が生息することが明らかになった。その内の一つは、2018年1月に犀川小学校付近に出没し,住民多数に目撃された群れである。この群れは,約50頭の個体からなり、犀川右岸の丘陵地帯を主に行動していたが,6月から7月にかけては,人里を遠く離れて富山県との県境近く犀川源流部の山岳地帯を行動したことが明らかになった。金沢市の6群の内、3群の行動圏は農業地域,あるいは住宅密集地へとさらに拡大する恐れがあり,被害の広域化,深刻化が懸念される。抜本的な対策を検討する必要がある。

「金沢市のニホンザルの群れ分布と農業被害の拡大経過について」(PDF:649KB)

「石川県白山地域産ヒメヒミズの歯の計測値」

橘 悠生・八神徳彦・横畑泰志・柏木健司

石川県白山自然保護センターに収蔵されているヒメヒミズ標本のうち、石川県白山地域産の5個体の頭骨標本を対象に歯の計測を実施した。なお、ヒメヒミズの歯式として、I 3/2 + C 1/1 + P 3/3 + M 3/3 =38を採用し、これら頭骨には全ての歯が植立していることを確認した。白山地域産ヒメヒミズの基礎データを取得する目的で、咬合面観の歯冠長と歯冠幅を以下の歯を対象に計測した:上顎歯の全ての歯(I1–3,C1,P1–3,M1–3);下顎歯の遠位側4本(P3,M1–3)。なお、計測はデジタルマイクロスコープで行い、計測手法は河村(1993)に従った。白山地域産のヒメヒミズの歯の咬合面観の計測値は、既出版の文献の計測値と大まかに一致した。一方、P3とM3の歯冠長で大きく、M3の歯冠幅で僅かに小さい。これらの相違が、計測方法の違いによるものなのか、地域変異を反映した結果なのか、現時点では判断し得ない。

「石川県白山地域産ヒメヒミズの歯の計測値」(PDF:1,300KB)

「白山麓におけるニホンジカのライトセンサスの試み(第2報)」

八神徳彦・稲田奈緒・宮崎顕治・小川弘司・北市 仁・野上達也・宗田典大・村中克弘・川畠敦仁・有本紀子

白山麓のニホンジカ生息状況を把握するためライトセンサス調査を行った。調査は11月中旬から下旬に,石川県白山市の林道を中心に,5本の調査ルート,標高300-1,070 m,距離6-17 kmで行った。2018年から2021年のライトセンサスでは,シカと確実に確認できたのは2020年の瀬波川の1頭のみであり,シカと思われるのは2021年の赤谷で4頭であり目撃数の増加傾向がみられた。

「白山麓におけるニホンジカのライトセンサスの試み(第2報)」(PDF:344KB)

「白山の山地帯における小型哺乳類の採集記録」

八神徳彦

白山における小型哺乳類の生息状況を知るために、山地帯において採集調査を行った。調査地は、湿性地と林地の根倉谷園地(標高735m)、河川氾濫原の市ノ瀬園地(標高800m)、ミズナラが優占する落葉広葉樹にスギ壮齢林が混じる六万山下(標高990m)、ブナが優占する落葉広葉樹林の六万山上(標高1220m)の4か所で行った。採集されたのはヒミズ、ヒメネズミ、アカネズミ、スミスネズミ、シントウトガリネズミだった。

「白山の山地帯における小型哺乳類の採集記録」(PDF:208KB)

「タカチホヘビの採集記録」

八神徳彦・安田雅美・内藤恭子

石川県の準絶滅危惧種に指定されているタカチホヘビの死体を、白山市中宮と同市上野で取得した。

「タカチホヘビの採集記録」(PDF:169KB)

「白山自然保護調査研究会」令和2年度委託研究成果要約

「白山自然保護調査研究会」令和2年度委託研究成果要約(PDF:474KB)

 

お問い合わせ

所属課:生活環境部白山自然保護センター 

石川県白山市木滑ヌ4

電話番号:076-255-5321

ファクス番号:076-255-5323

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