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更新日:2021年3月12日

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「石川県白山自然保護センター研究報告」(第45集)要約

論説

「白山(石川県域)におけるミヤマウイキョウ(Tilingia tachiroei)の分布と生息地の状況」

栂典雅・野上達也・平松新一・後藤理子

白山の石川県域には、従来からミヤマウイキョウ(Tilingia tachiroei)が分布するとされていたが、形態的に類似している同属のシラネニンジン(T.ajanensis)との混同が疑われたため、2016年及び2017年に分布状況調査を行った。その結果、室堂や南竜ヶ馬場周辺にはミヤマウイキョウは見つからなかったが、シラネニンジンは多く確認された。白山に生息するシラネニンジンの葉の終裂片幅がミヤマウイキョウと相似していたことから、シラネニンジンがミヤマウイキョウと見誤られてきたものと推測された。一方、ミヤマウイキョウが四塚山及び三ノ峰周辺に分布するとの情報を得たため、四塚山周辺において調査を行ったところ、その生育が確認された。大まかな計測と目視により、生息地の面積は200から250平方メートル、花を着けた株数は百株前後と推定された。また、方形枠を用いた植生調査の結果、ミヤマウイキョウが比較的高い常在度で出現し、白山では分布が限られるミヤマオダマキも相当数確認できた。以上により、当該地の植生は、白山の高山帯において特殊性・希少性が極めて高いものであると判断された。

「白山(石川県域)におけるミヤマウイキョウ(Tilingia tachiroei)の分布と生息地の状況」(PDF:1,027KB)

「石川県におけるニホンジカに対する誘引物の効果,2018」

北市仁・近藤崇・小川弘司

石川県ではニホンジカ(Cervus nippon;以下、シカ)が県の南部を中心に増加傾向にある。県内には、シカの餌となる下層植生が豊富な環境が多く、現在著しい農林業および自然植生への被害は確認されていないが、今後シカの増加によりこれらの被害が懸念され、被害未然防止のためにも、シカの捕獲が急がれる。局所的な捕獲には誘引捕獲が効果的と考えられるが、下層植生が豊富な地域でのシカの誘引に関する知見は不足している。したがって、本調査では下層植生が豊富な地域において、シカに対する誘引物の効果を明らかにすることを目的とした。調査地は加賀市2地点、小松市4地点および白山市3地点の合計9地点とした。2018年9月から2019年1月末の間、各地点の林縁部にシカ用の誘引物(鉱塩、干し草、ヘイキューブ)を設置し、誘引物周辺を自動撮影カメラで動画撮影した。その結果、シカは各誘引物に対して反応(摂食や接近)する様子が複数回確認された。このことから、下層植生が豊富な地域においても、誘引物はシカに対して一定の誘引効果があると見込まれた。
「石川県におけるニホンジカに対する誘引物の効果,2018」(PDF:468KB)

「白山麓におけるニホンジカのライトセンサスの試み」

近藤崇・北市仁・八神徳彦・小川弘司・村中克弘・亀田尚志・稲田奈緒

近年、ニホンジカ(Cervus nippon;以下、シカ)は分布の拡大や個体数の著しい増加により、農林業や自然植生に大きな影響を与えることが問題となっている。南アルプスでは、数年の間に高山植物が壊滅的な被害を受けた例も報告されている。石川県において、シカは1900年はじめに捕獲などの影響により一度生息していない状態となっていたが、2005年から毎年捕獲されていることから、定着、増加傾向にあると考えられている。そこで今回、白山麓におけるシカの生息状況調査の一つとしてライトセンサスを実施した。ライトセンサスとは、日没後に低速で走る車から、強力なライトで左右を照らして、動物を探す方法で、今回は、白山麓に5つのルートを設定して調査を行った。その結果、シカは一度も確認されず、カモシカやキツネ、アナグマなどが観察された。他の調査からルート付近でシカが確認されていることから、シカの生息密度が低いため、今回の調査では確認できなかったと考えられる。今後は、調査時期や回数を検討して、シカの推移を検知可能な調査にしていく必要がある。

「白山麓におけるニホンジカのライトセンサスの試み」(PDF:604KB)

「石川県のブナ科樹木3種の結実とツキノワグマの出没状況,2018」

八神徳彦・野上達也・伊丹えつ子・小谷二郎・野崎栄吉

ツキノワグマ(Ursusu thibetanus japonicus、以下クマ)出没予測のため、主要な餌となるブナ、ミズナラ、コナラの雄花序落下量と着果度を観測することにより結実予測を行った。調査はクマの多い加賀地方を中心に、各樹種20から30か所程度で行った。その結果、5月から6月に実施した雄花序落下量調査では、県内全体としてブナは並作、ミズナラは大豊作、コナラは並作と予測された。また、8月に実施した着果度調査では、県全体としてブナは豊作、ミズナラは豊作、コナラは並作と予測された。しかし、ブナでは虫食いが多く餌としての価値は悪かった可能性がある。ミズナラ、コナラの実が比較的多いため、2018年は秋に平野部へのクマの大量出没は低いと予測された。実際、秋季以降のクマの平野部への出没は少なかったが、5月から7月の出没は多かった。今後、春から夏に出没するクマの対策も必要となってくる。

「石川県のブナ科樹木3種の結実予測とツキノワグマの出没状況,2018」(PDF:1,073KB)

「高山帯風衝地の矮小低木パッチが地表性ゴミムシ類に及ぼす影響」

平松新一

白山高山帯は裸地や崩壊地が多く、小動物の生息地や避難地として植物パッチの存在が重要であると考えられる。そこで、2017年8月に白山高山帯にある風衝地の植物パッチ内外でゴミムシ類の採集を行うとともに、パッチ内外の環境を測定し、風衝地に生息するゴミムシ類集団と環境因子との関係について考察した。植物パッチ内はパッチ外に比べて土壌水分が多く、平均地表面温度および最低地表温度は高く、最高地表温度は低く、地表面温度の日較差は小さかった。ゴミムシ類の総個体数、ミズギワゴミムシ属の一種の個体数はパッチ外よりパッチ内で有意に多かった。風衝地では植物の被覆が土壌水分や温度日較差条件を変化させ、これらがゴミムシ類の個体数に影響したと考えられる。植物パッチは高山帯に存在する生息地の中では比較的環境条件の変動が少なく、その結果、ゴミムシ類が生息可能な微小生息地を創出していると推測された。

「高山帯風衝地の矮小低木パッチが地表性ゴミムシ類に及ぼす影響」(PDF:2,153KB)


「白山北縦走路北部で採集された地表性ゴミムシ類」

平松新一

2013年8月下旬から9月上旬にかけて白山北縦走路北部の亜高山帯地域で地表性ゴミムシ類の調査を行った。その結果、15種222個体のゴミムシ類が採集され、オサムシ亜科は4種、マルクビゴミムシ亜科は2種、ヌレチゴミムシ亜科は1種、ナガゴミムシ亜科は8種が記録された。最も多く記録されたのはクロナガオサムシで、同種はこれまでも白山亜高山帯では多く記録された。これに次いで多かったのはハクサンクロナガゴミムシで、白山では夏緑広葉樹林帯上部から亜高山帯下部を中心に生息しており、両種の本地域における分布はこれまで知られている分布高度範囲内に含まれていた。本調査結果からみた北縦走路北部のゴミムシ類は、ナガゴミムシ亜科の種が多いこと、ゴモクムシ亜科の種が少ないことから、森林に生息するゴミムシ類と類似した種構成をしていることが分かった。 

「白山北縦走路北部で採集された地表性ゴミムシ類」(PDF:446KB)


「江戸後期から明治期の紀行文・登山記録に残された白山のライチョウ」

小川弘司・永井肇

江戸時代後期から明治期の紀行文・登山記録をもとに過去の白山のライチョウ(Lagopus mutus japonicas)の生息の把握を行った。収集した39点の紀行文・登山記録のうち25点の史料にライチョウの目撃した記録があった。目撃記録の中にはライチョウとは別の鳥の可能性もあることから、記載内容がライチョウに間違いないかの検討を行った結果、確実にライチョウの目撃と断定したものは10点となった。内訳は江戸後期のものが7点、明治期のものは3点で、古くは1813年(文化10)、新しくは1910年(明治43)だった。目撃場所は白山山頂部の大汝峰から御前前、室堂から弥陀ヶ原といった場所のほか、別山での目撃もあった。また、ヒナを連れた親子での確認事例が10点中6点あり、繁殖していたこともわかった。ライチョウの目撃と断定した点数が少なく、生息の連続性や個体群としての存在を把握するまでには至らなかったが、白山における過去のライチョウの生息の一端を明らかにすることができた。

「江戸時代後期から明治期の紀行文・登山記録に残された白山のライチョウ」(PDF:833KB)


「白山自然保護調査研究会」平成29年度委託研究事業要約

白山自然保護センターが白山自然保護調査研究会に委託している研究事業の平成29年度分成果要約。

「白山自然保護調査研究会」平成29年度委託研究事業要約(PDF:286KB)

お問い合わせ

所属課:生活環境部白山自然保護センター 

石川県白山市木滑ヌ4

電話番号:076-255-5321

ファクス番号:076-255-5323

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