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更新日:2021年4月19日

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「石川県白山自然保護センター研究報告」(第47集)要約

論説

「根倉谷園地の植生調査,2020」

大石佳織・森 由利子・白井伸和・八神徳彦・南出 洋・後藤理子

白山国立公園にある根倉谷園地は、ミズバショウや湿地性植物が観察できる園地であるが、湿地の乾燥化、イノシシによる掘り起しなどがみられている。そこで、園地の基礎的な情報を把握するために植生調査を実施した。調査は8月に湿性草原の特徴的な壮観を示す8箇所に方形枠を設置しBraun-Blanquetの方法により植生調査を行った。この結果、49種の草本、木本、シダ植物、コケ植物が確認され、トキソウ、ヤチダモなど希少種も生育していることが確認された。また、湿性草原の中央部まで木本が侵入しており、森林への遷移が進行していたことが伺えた。

「根倉谷園地の植生調査,2020」(PDF:1,120KB)

「石川県の手取川中下流域におけるニホンザルの遊動域の変化」

小川弘司・内藤恭子

石川県の手取川中下流域に生息するニホンザルの8つの群れについて、2004年度から2019年度までの遊動域の変化を明らかにした。15年の間に、遊動域は徐々に手取川の下流域へと拡大した。最下流に位置するクロダニA群は手取川の山間地を抜け、手取川扇状地の月橋町付近や獅子吼高原へと進出した。また、タイコA1-2群は手取川流域を越え小松市の麦口町、原町付近へ進出した。このように当地域のニホンザルは手取川の山間地に留まることなく、その外側へ進出・拡大するまでになった。この両群の遊動域は他の群れと比較して大きく、ほかの群れは新たな遊動域の進出する場所を両群に押さえられ、互いに競合しない範囲で棲み分けしていた。手取川中下流域には今回対象とした群れ以外の群れもおり、また新たな群れの存在も確認されている。今後のニホンザルの保護管理の在り方を検討するうえで、当地域のニホンザルの実態把握に努めていく必要がある。

「石川県の手取川中下流域におけるニホンザルの遊動域の変化」(PDF:3,808KB)

「石川県のブナ科樹木3種の結実予測とツキノワグマの出没状況,2020」

八神徳彦・野上達也・伊丹えつ子

ツキノワグマ出没予測のため、主要な餌となるブナ、ミズナラ、コナラの雄花序落下量と着果度を観測することにより結実予測を行った。調査はクマの多い加賀地方を中心に、各樹種20~30か所程度で行った。その結果、5月~6月に実施した雄花序落下量調査では、県内全体としてブナは大凶作、ミズナラは豊作、コナラは並作と予測された。また、8月に実施した着果度調査では、県全体としてブナは大凶作、ミズナラは並作、コナラは凶作と予測された。標高の高い地域に生育するブナ、里山に多く生育するコナラの作柄が悪いことから、秋期にツキノワグマの出没が多くなると予測され、県自然環境課では「ツキノワグマの出没注意情報」及び「ツキノワグマの出没警戒情報」を発令し注意喚起を行った。クマの出没は869件に達し、集落内での出没も多かった。

「石川県のブナ科樹木3種の結実予測とツキノワグマの出没状況,2020」(PDF:968KB)

「2020年秋,石川県で市街地,集落に出没したツキノワグマの食性」

大井 徹・小川弘司・北市 仁

2020年秋は、クマの出没が相次いだ。クマを集落、市街地に引き寄せた要因を特定し、出没防止対策に生かすため、出没グマの糞、消化管内容物を収集、分析した。カキノキ果実が89%の個体から、リンゴ果実、ドングリが10~33%の個体からわずかずつ検出された。

注目されるのは、加賀市の商業施設内で捕獲されたクマの例で、捕獲地点には存在しないカキノキ果実が内容物の高い割合を占め、捕獲地点に至る直前にカキノキの果実を摂食していたと推測された。施設の北側約250mにはカキノキが点在する帯状の森林があり、クマ本来の生息地である広い森林地帯に接続していた。クマはカキノキの果実を採食しながら帯状の森林を移動してきた末、住宅地に迷い込んだと考えられた。ドングリ類については、山中のブナ、ミズナラ、コナラが不作であった一方、住宅地、農地のすぐ側に生育するアベマキ、シイノキ等がよく実り、クマを引きつけたと考えられた。

「2020年秋,石川県で市街地,集落に出没したツキノワグマの食性」(PDF:243KB)

「ツキノワグマ大量出没年における人里への侵入経路の事例」

中山史生・八神徳彦

2020年は石川県において、里山から人里でのクマの出没が多かった。そこで、クマが何を求めて人里に来るのか、また、どのようにして侵入してくる知るためにクマの痕跡調査を行った。調査は、繰り返し集落周辺でクマが目撃された加賀市上原町と菅谷町で行った。この結果、繰り返し出没した場所は、クマが身を潜めることのできる幅の狭い樹林帯でつながっており、見通しの悪い支流、竹林、藪地が移動経路となっていた。また、クマはこのような場所に放置されたカキ、クリ、イチョウなど果実を繰り返し食べていることが分かった。このため、クマの侵入を防ぐには山地から連続する緑地帯の藪を刈り払うなど見通しをよくすることや、不要な果実などを排除することが必要と思われた。

「ツキノワグマ大量出没年における人里への侵入経路の事例」(PDF:2,857KB)

「白山周辺地域における自動撮影カメラによるニホンジカ生息状況調査」

北市 仁・近藤 崇・江崎功二郎・有本 勲・宗田典大・内藤恭子・稲田奈緒・小川弘司・小谷直樹・野崎亮次

 

石川県では南加賀地域を中心にニホンジカCervus nippon(以下、シカ)が増加傾向にあり、一部の地域ではシカによる被害が確認されている。また県の最南部には白山(標高2,702m)が位置し、その周辺一帯は原生的な自然環境が多く残存していることから、白山国立公園に指定されている。白山においてはシカの侵入による影響が懸念されているものの、白山においてシカの生息状況に関する情報は不足している。そこで石川県白山自然保護センターと林野庁近畿中国森林管理局石川森林管理署は、平成27年以降共同調査を実施し、白山周辺地域(白峰および中宮地区)に19台の自動撮影カメラを設置した。本報告では平成27年から令和2年までに撮影された動画からシカをカウントし、シカの撮影頻度や性・年齢クラス分けによる分析を行った。その結果、白山周辺地域におけるシカの生息が確認された。またこれらの地域では、広くオスが確認されたことから広域的にシカの侵入初期段階にあり、メスや幼獣が確認された一部の地域では個体数増加段階に移行しつつあることが示唆された。

「白山周辺地域における自動撮影カメラによるニホンジカ生息状況調査」(PDF:702KB)

「医王山登山道における能登ヒバ材工作物のクマ被害について(中間報告)」

宮崎顕治

登山道など山地に設置する標柱などの木製工作物は、ペンキ塗装などすると塗布等した材料に反応したツキノワグマにかじられる被害にあうことが以前から知られている。石川県内でも白山を中心に同様の被害が見られ、金沢市の医王山でもスギ材工作物被害が発生している。県内では近年、無垢の能登ヒバ材を使用した工作物設置が一般的となっており、医王山での無垢材工作物の被害状況を調査した。その結果、多くの工作物で被害が見られた。また、無垢のヒバ材を登山道周辺に実際に配置し、被害が発生するかどうか再現性を調査したところ、1箇所でクマにかじられる被害があった。

「医王山登山道における能登ヒバ材工作物のクマ被害について(中間報告)」(PDF:637KB)


「白山高山地域におけるゴミムシ類のベイト嗜好性」

平松新一

地表性コウチュウ類は分類群や種ごとに多様な食性をしているため,トラップに入れるベイトにもさまざまなものが用いられている。そこで,2020年8月に白山の雪田,風衝地,ハイマツ林においてすし酢およびさなぎ粉を用いて,山岳高所に生息するゴミムシ類を対象として,それらのベイト嗜好性について調査した。その結果,すし酢では82個体,さなぎ粉では175個体のゴミムシ類が採集された。本調査で記録された種のうち,最優占種であるミズギワゴミムシ属の一種Bembidion sp.は調査地点ごとにより多く誘引されるベイトが異なっていたが,ツヤヒラタゴミムシ属の一種Agonum sp.は採集された2 地点ともさなぎ粉を入れたトラップだけから記録された。白山のように調査に労力が必要な場所では,複数のベイトを用いた方がより多くの種類を記録でき,効率的な調査を行うことができるだろう。 

「白山高山地域におけるゴミムシ類のベイト嗜好性」(PDF:687KB)

「2019,2020年に白山観光新道のライントランセクト調査で記録されたチョウ類の種構成」

平松新一

2019年及び2020年の夏季に,白山観光新道の殿ヶ池避難小屋から室堂までの間で,チョウ類相およびチョウ群集の特徴を把握するためにライントランセクト法による調査を行った。その結果,両年合わせて18種662個体が記録された。これらのうち最も多く記録されたのはベニヒカゲErebia nerieneで,次いでアサギマダラParantica sita,ヒメキマダラヒカゲZophoessa callipterisが多くこれら3 種で全個体数の90%近くを占めていた。本調査地で観察されるチョウは,ベニヒカゲなど山地性の種を主体として,そこに平野部や低山地で見られるキアゲハPapilio machaonなどが混じって構成されていた。他の山岳地域の調査結果と比較した結果から,白山で見られるチョウ類は他の山岳地域と比較的類似した種構成をしていると言うことができる。

「2019,2020年に白山観光新道のライントランセクト調査で記録されたチョウ類の種構成」(PDF:447KB)

「石川県における昆虫類RDB選定種の分布データを用いた環境評価」

平松新一・富沢 章・稲田奈緒・安田雅美

2020年に改訂されたいしかわレッドデータブック(RDB)に記載された昆虫類の分布情報をもとに,世界測地系対応メッシュマップの2 次メッシュおよび5倍地域メッシュの1区画ごとに記録されているRDB種数を求め,その結果が環境評価に利用できるか検討を行った。その結果,メッシュ 1 区画に含まれる石川県の昆虫類RDB種数は,2 次メッシュで 0–65,5倍地域メッシュで0–55の範囲にあった。RDB種数が多かったのは加賀南部地域の区画で,そこは片野鴨池や塩屋海岸,錦城山などの多様な環境が含まれていた。一方,中能登から奥能登にかけての地域ではRDB種数は比較的少なかった。このようなRDB種の分布情報を分かりやすい形で提供すれば,開発行為を行う際の注意喚起などにつなげることができ,これらの情報がRDB種の増加に対する抑止力となると考える。

「石川県における昆虫類RDB選定種の分布データを用いた環境評価」(PDF:464KB)

「白山自然保護調査研究会」令和元年度委託研究成果要約

「白山自然保護調査研究会」令和元年度委託研究成果要約(PDF:134KB)

 

お問い合わせ

所属課:生活環境部白山自然保護センター 

石川県白山市木滑ヌ4

電話番号:076-255-5321

ファクス番号:076-255-5323

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