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更新日:2010年4月7日

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対談・寄稿文 - 地方からの改革提言2第2次分権改革のスタートライン

地方分権は、地域住民の望むところを実現するため、地域の統治力(ガバナンス)を高めること

地方分権は平成7年の地方分権推進法の制定以来、平成12年の地方分権一括法の制定など、緩やかなものの、その歩を進めてきた。

そして、地方分権推進委員会の最終報告(平成13年7月)は次のように述べている。『登山にたとえれば、まだようやくベース・キャンプを設営した段階に到達したにすぎないのである。改革の前途の道筋は遼遠である。今次の分権改革は第1次分権改革と呼ぶべきものであって、分権改革を完遂するためには、これに続いて第2次、第3次の分権改革を断行しなければならない』と。

そして、この6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(いわゆる骨太の方針2003)において、地方分権の次の道筋である三位一体の改革について一定の方向性が示された。我々は、まさに、今、第2次分権改革のスタートラインに立っているのである。

地方分権改革推進会議の意見書は、地方分権の流れを逆行させるもの

さて、この三位一体の改革の議論は、経済財政諮問会議での審議に先立ち、政府の地方分権改革推進会議で16回の審議が行われ、6月6日に総理に意見書が提出された。

私は、昨年12月、岡崎洋・前神奈川県知事の後任として同会議の委員を拝命し同会議の審議に臨み、最終的にはその意見書全体に反対するという立場をとったので、まず、同会議の審議を振り返ってみたい。

平成13年に設置された地方分権改革推進会議は、11名の委員で構成されているが、同会議の使命は、地方分権推進法に基づいて設置された地方分権推進委員会の後継機関として、真の地方分権型社会への道筋を示すことであると理解している。

しかしながら、これまでの審議を振り返ると、国の財政再建に力点が置かれ、残念ながら『地方分権の推進』という本来の使命からほど遠いものであった。

どうも、審議を進める側に「地方は放漫な財政運営を行っている」という前提に立ち、地方の歳出をカットすることが国の財政再建につながるという考えが根底にあったように思えてならない。たしかに、財政再建は大きな課題であり、国民的な議論を進めることは大切であるが、同会議は地方分権推進のための三位一体の改革について審議することが使命であったはずである。こうした基本認識について委員間に相違があったことが残念でならない。

総理に提出された意見書の内容は、ご承知のとおり、基幹税の税源移譲を明記していないほか、地方交付税をいわゆる法定分と地方財政対策分に分け、法定分を地方共同税(仮称)として、現行の交付税総額を実質的に約半分にするという、地方行政の現場に大きな混乱を生じさせるものであった。

意見書は、国の財政再建に主眼が置かれ、地方分権の流れを逆行させるものであったため、先程述べたように、私は、他の3名の委員とともに意見書全体に反対の意思を表明せざるを得なかったのである。

また、審議の公開性が極めて低かったことも残念であった。

ただ、総理に提出された意見書に対しては、地方団体やマスコミから批判の狼煙があがり、意見書は、経済財政諮問会議において議論すらされなかったという。意見書に反対した委員の一人として、本当に安堵している。

三位一体の改革のあるべき姿

私は、三位一体の改革のあるべき姿を次のように考えている。
三位一体の改革とは、地方自治体が住民の意思に基づき、自己決定できるよう、地方の歳出規模と地方税収との乖離を縮小し、住民の受益と負担の関係を明確化することである。

そのためには、まず、税源移譲については、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築していくため、所得税、消費税などを中心とした基幹税目を移譲する。

また、国庫補助負担金の見直しについては、各省庁ごとに数値目標を定め、具体的な計画を策定して順次進めていく。そして、見直しを行っても、引き続き必要とする事務事業については、地方への負担転嫁となるようなことが決してないよう、必要な財源を税源移譲する。

そして、地方交付税であるが、主な機能の一つは、国が法令や予算により定めた政策を財源的に担保することである。国は地方自治体が標準的な行政サービス水準を確保できるよう措置する責任を有しており、いわゆる「財源保障」とは、こうした文脈で捉えなければならない。その前提で、法令による歳出や事務事業の義務付け、国庫補助負担金等による国の関与の廃止・縮減や税源移譲と一体で検討し、交付税への依存度を低下させていかなければならない。

さらに、次の点を付言しておきたい。
歳入面の質の転換を図ることによって、住民の身近なところで歳出のチェックがより厳しくできるようになり、国・地方を通じた歳出抑制効果が働き、国民全体の負担もむしろ軽減されるのである。

地方から改革内容の具体的提示を

去る7月に岐阜県で開催された全国知事会議では、三位一体の改革が主要なテーマとなり、これまでの「お願いする知事会議」から「闘う知事会議」へ転換し、具体的な改革案を積極的に国に提示していくべきであるという意見が相次いだ。

現在、全国知事会においては、年末の予算編成に向けて、国庫補助負担金の廃止の是非等についての意見の取りまとめ作業を進めており、各都道府県においては300を越える国庫補助負担金の一つ一つについての検討を行っている。

また、先般、新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)のメンバーである6県の知事が国庫補助負担金の見直しに関する緊急提言を行った。

このように地方から改革の内容を具体的に提言していこうとする動きが既に始まっている。改革を国にお願いするのではなく、自ら挑んで勝ち取ろうする動きはこれまでになかったことである。

地方分権とは、国と地方の役所間の財源の分捕り合戦ではない。地域住民の望むところを実現するため、地域の統治力(ガバナンス)を高めることである。まさに、地方の政策決定にあたって、国の権限と財源の制約から解放することであると思う。

その地方分権のあるべき姿が、一方的に国によって決定されることとなっては、対等と協力の関係と言われている地方分権の名折れと言わざるをえない。だからこそ、地方が一枚岩となり、攻めの姿勢で、地方から地方分権改革の具体的内容を提示していかなければならないのである。

それと同時に、「地方は放漫な行財政運営を行っている」という非難を受けることがないよう、各自治体が行財政改革をしっかり実行し、住民ニーズに的確に応えるサービスの提供に、これまで以上に日々努力していかなければならないと思う。

 

(月刊ガバナンス  2003年10月号)

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