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更新日:2023年6月28日

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トキが舞ういしかわを目指して  全体編

  石川県は、海から高山まで、豊かな自然環境に恵まれています。

  白山のブナ林や高山植物、能登半島や加賀の海岸景観、里山や水辺などの身近な自然まで、美しく多様な自然環境が残されており、県内には、およそ1万を超える種類の生きものがいると考えられています。

  そのような中で、いま、多くの生きものが、人間の活動などが原因で、絶滅の危機にあります。

  トキ。「ニッポニア・ニッポン」と、日本を象徴するような学名が付いた石川県とつながりが深い、この鳥を知っていますか。

  このトキも、かつては、県内各地で普通に見られましたが、開発や乱獲など、人間の活動によって、一度は、野生で絶滅した鳥です。

  私たち人間の暮らしが原因で絶滅した、この美しいトキを、再び石川・能登の大空へ。

  トキの生態や、石川県とトキとのつながりをご紹介しながら、人とトキが共生していくために必要な環境についてお伝えします。

トキってどんなトリ?

  ねぐらに戻るトキが夕日を浴びて飛んでいく光景は、言葉では言い表せない程美しいものです。

  トキは、体の長さがおよそ75センチ、遠くからでも目立つ真っ赤な顔。後頭部には、冠羽と呼ばれる長い飾り羽が見られます。

  そして、トキの最大の特徴が、なんといっても羽の色です。

  翼を広げると、トキ色と呼ばれる、淡いピンク色の美しい羽が見られます。

  トキは、鶴や鷺のように足が長くないため、田んぼなどの浅い湿地で、長く下に曲がったくちばしを上手に使って、ドジョウやカエルをとり、集落近くの森や林で営巣するなど、里地里山をすみかとする鳥です。

  トキにとって、人が生活する里地里山が、絶好の生息環境となっています。

石川県とトキのつながり  

  石川県はトキとつながりの深い県です。

  昭和の初めごろには、トキは全国的に姿を消しつつありましたが、そんな中、羽咋市の眉丈山や穴水町などでは、少ないながら生息が確認され続けていました。

  「能里」と名付けられた本州最後のトキが生きていたのも、ここ石川県です。

  トキは明治時代以降、人が「美しい羽」を求めて乱獲が行われたほか、昭和時代以降、農薬の使用や森林伐採といった、生息環境の悪化が影響し、能登と新潟県の佐渡市に少数が確認されるだけになりました。

  昭和30年代以降になり、トキが生息していた羽咋市、穴水町、民間団体による保護活動が行われましたが、こうした活動もむなしく、石川県のトキは年々その数を減らし、昭和39年には、とうとう1羽だけになってしまいました。

  そして、能里と名付けられたこのトキは、昭和45年に、穴水町で捕獲され、人工繁殖のために新潟県の佐渡トキ保護センターに移送されました。

  こうして、本州最後の生息地である石川の空から、トキは姿を消しました。

日本の空にトキが戻る

  一度は日本の空から姿を消したトキですが、再びトキを野生に戻すため、佐渡トキ保護センターで飼育繁殖が進められていきました。

  平成11年には、中国から贈られた「ヨウヨウ」と「ヤンヤン」のペアによって日本で初めて人工繁殖が成功し、「ユウユウ」が誕生しました。

  その後、飼育しているトキの数が順調に増加し、佐渡市では、トキの棲める自然環境を再生するための取り組みが続けられ、平成20年には、10羽のトキが放鳥されました。

  平成20年以降も、放鳥が継続的に行われており、佐渡市では、生きもののすみかとなる江と呼ばれる溝の設置をはじめとした生きものを育む農法など、トキの餌場を確保し、豊かな生態系を守る取り組みが行われています。

<有限会社齋藤農園  代表取締役  齋藤  真一郎さん>

  田んぼでトキは餌をとるのがほとんどですので、田んぼの生存環境をいかに良くするかという部分を考えると、今の環境保全型農業と言われてますけど、佐渡の場合は、生物多様性農業と言ってます。

  環境保全型農業は、化学肥料減らしたり、農薬減らしたりという、そういう取り組みで考えると、やっぱり安全の世界だと思いますけども、生物多様性農業は、やっぱり生きものの命を考えていく、人の命を考えていくという、そういう農業に置き換えるとやっぱり安心を追求する農業だと思います。

  ですから、佐渡の方々は、もちろんあの安全も大事ですけども、生きものと一緒に暮らしていく。生きものへのまなざしを持った、そういう農業を取り組んでいると言うことです。

  田んぼの生きもの調査をやったり、いま、ここにありますように、田んぼに水が一部溜まっていますけども、ふゆみずたんぼという、生きものが冬の間でも、過ごせるそういう環境づくりをする、田んぼの一部に水たまりを作って、年間を通じて、生きものが住める環境づくりをするという、そういう取り組みをしています。

  単なる、安全だけじゃなくて安心を付加するそんな農業を取り組んでいますね。

トキの観察マナー

  また、トキは臆病で、人が近づくと、驚いて飛び立ち、十分に餌をとれなくなるため、佐渡市では、トキをやさしく静かに見守る環境づくりが行われています。

<佐渡市役所  農業政策課  主任  土屋  智起  さん>

  佐渡では、野生のトキを見つけた際に、観察していただくときのルールを定めています。まず、野生のトキを見つけたら近づかず、できるだけ距離をとって観察していただくようお願いします。また、車に乗っていてトキを見つけた際は、車から降りず、窓の中から、トキを見ていただくようお願いします。あと、田んぼや農道、他人の家の敷地など、そういったところに、無断で入り込むというような、地域の迷惑になるようなことも止めていただくようお願いしております。

  佐渡市では、最初の放鳥の頃から、この観察ルールを守っていただくよう市民の皆様にお願いを続けております。今では、佐渡市のほとんどの方が、この観察ルールを守って、安全にトキを見ていただくようになっております。

  佐渡市では、トキに影響を与えず観察できるスポットとして、トキのみかた停留所というものを設置しております。トキ交流会館と、田んぼアート実施会場、この2カ所に設置しておりまして、ここでは車から降りて、ゆっくりトキを観察していただくことができます。

能登地域での放鳥に向けた取組

  トキは、長らく佐渡市のみ工繁殖の取組が続けられてきましたが、鳥インフルエンザなどの感染症が発生すると、一気に絶滅のおそれが高まることから、いしかわ動物園でもトキの飼育が行われています。

  トキが、石川県に戻ってきたのが平成22年。

  4羽のトキが、いしかわ動物園に到着し、飼育が始まりました。

  平成28年には、いしかわ動物園のトキ公開展示施設「トキ里山館」がオープン。

  傾斜のある地形を活かして、トキが飛翔する姿のほか、休息する様子や泥の中の餌をついばむ様子など、多様な視点で観察できます。

  学習展示コーナーでは、本物の羽根を触ることができる展示や、保護の歴史がわかるパネルがあり、トキについて楽しみながら学べます。

  こうした中で、令和4年、佐渡の野生のトキが鳥インフルエンザ等の感染症で絶滅するのを防ぐため、国は、トキの鳥受入の候補地となる自治体の募集を開始します。

  募集の開始を受けて、石川県、能登の9つの市と町および関係団体は協議会を設置し能登地域を放鳥候補地として申請。

  8月には地域が放鳥候補地に選定され、石川県でもトキとの共生実現に向けた取り組みがスタートし、令和5年2月令和5年2月、トキの餌となる生きものが暮らしやすいような環境を整えるため、能登の9市町にトキ放鳥推進モデル地区を設置しました。

トキとの共生目指して

  人の暮らしに近い場所で、人と深くかかわりながら暮らしているトキ。

  トキが生きていくためには、餌場となる生きもの豊かな田んぼ、ねぐら・営巣地となる健全な森林環境、トキを見守る環境づくりが必要です。

  トキが再び舞うことができる、豊かな里地里山をつくること。

  それは、トキだけではなく、里地里山の生物多様性全体の保全にもつながり、私たち人間にとっても、安全で安心な環境と心の豊かさをもたらしてくれるものです。

  能登の里地里山、そしていしかわの空に、トキが舞う光景は、私たちに本当の豊かさをもたらしてくれるのではないでしょうか。

 

お問い合わせ

所属課:生活環境部自然環境課 

石川県金沢市鞍月1丁目1番地

電話番号:076-225-1508

ファクス番号:076-225-1479

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