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豊かな自然が広がる石川県。
そこには、地域で暮らす人々が手を入れ、様々な形で活用することにより、生態系が保たれた里地里山があります。
かつて、その空には、里地里山のシンボルともいえる鳥、トキが羽ばたく景色がありました。
ここでは、トキとはどんな鳥なのか、トキのからだの特徴や暮らしの様子をご紹介します。
トキは「ニッポニア・ニッポン」の学名が付く日本を象徴する鳥です。
かつては全国に生息していましたが、開発や乱獲などの人間の活動によって数が激減。
現在は唯一、新潟県の佐渡市にトキが暮らしています。
トキは、シンボルとしての側面があり、日本郵便の10円普通切手としてトキの絵が使われています。
大人のトキは、体をまっすぐに伸ばした時の、くちばしの先から、尾羽の先までの全長はおよそ75cm、翼を広げた時の左右の端から端までは、およそ140cmあります。
体重はおよそ1.5kgで、オスの方が重く、最大でも2kgぐらいです。
トキの特徴の一つが遠くからでも目立つ真っ赤な顔。
顔の赤い部分には羽毛が生えていないので、エサを食べるときに泥がつきにくくなっています。
子どもは、黄色っぽい顔をしており、クリッとした目が特徴的です。
後頭部には、冠羽と呼ばれる長く立派な飾り羽が見られます。
怒ったときや驚いたとき、気持ちの良いときなど、感情表現としてこの羽を広げることがあります。
トキの最大の特徴は、何といっても羽の色です。
翼を広げると、トキ色と呼ばれる淡いピンク色の美しい羽が見られます。それは、餌となるサワガニなどに含まれる色素によって、ピンク色になっていると言われています。
秋に羽が抜け替わった頃は、トキ色が最も鮮やかな時期です。
トキは2月から7月頃の繁殖期に巣づくりや子育てを行います。
繁殖期に向けて、12月頃になると首のあたりの皮膚が黒く粉のように剥がれ落ち、それを体にこすりつけて灰色になります。
灰色に変化した羽は、繁殖できることを示すとともに、保護色の役目を果たしていると言われています。
このような方法で、羽の色を変化させるのはトキだけです。
トキは、日が昇る頃にねぐらから飛び立ち、田んぼなどの浅い水辺や畦などの草地でエサを探します。時々、周辺の木で休憩します。
日が沈む頃には、ねぐらに戻ります。
トキは、田んぼの中にいるカエル、ドジョウ、タニシ。田んぼの畦にいるミミズやバッタなど、数多くの生きものを食べます。
鶴や鷺のように足が長くないため、深い川や池に入って餌をとることはできません。
トキは一体どんな方法で餌を採っているのでしょうか。
長く下の方向に曲がったこの長いくちばしを巧みに使い、泥や土の中からエサを探しだします。
くちばしは先端まで神経が行き渡り、センサーのようになっていて、目で見なくても触れただけで、エサを探り当てることができます。
トキが暮らしていくためには、たくさんの生きものが生息する田んぼが欠かせません。
トキがねぐらとするのは、餌場から近いスギやマツの林などです。ねぐらに戻るトキの群れが夕日を浴びて飛んでいく光景は、言葉では言い表せない程美しいものです。
私たちの暮らしのすぐそばで生きるトキ。
人と深くかかわりながら暮らしています。
トキはそのほかにどのような特徴があるのでしょうか。
<いしかわ動物園 獣医師 堂前 弘志さん>
「トキを飼育している中で、どうしてもトキを捕獲しなくてはいけないことがあります。捕獲すると、他の鳥はくちばしでついてきたり、翼で叩いてきたり、爪で襲ってきたりしますが、トキの場合はそういうことをすることはほとんどなくて、比較的おとなしい鳥というイメージがあります。」
「オスの方がくちばしが太いとか長いとか、体が大きいとかで見分けることは不可能ではないかもしれないけれど、血液の遺伝子を調べてオス・メスの判断をしています。」
病気やケガをしたときの手当てはどうしているのでしょう。
「飼育している中で、病気やケガをすることがあります。その場合は獣医が手当をしますが、若鳥でくちばしを折ってしまったときは、獣医が慎重に骨をつなぎ、折れた部分をギブスで固定して、もと通りに、戻すことができました。トキも、人間と同じように手術したり注射したりして、健康管理を行っています。」
次にトキの1年の行動を紹介します。
トキが巣づくりや子育てを行う繁殖期。
2月頃から、気に入った異性に、くちばしで小枝をくわえて渡したり、相手の羽をくちばしで整える羽づくろいをします。
気に入った相手とペアになると、群れから離れて、ペアごとに巣をつくり、4月頃から卵を産みます。
オスとメスが交代で温め、順調にいくと、約28日で、卵の殻を破ってヒナが生まれます。
産まれた直後のヒナは、体重60gほど。
目は開いてなく、自力では立てません。
オスとメスが協力をしながら子育てを行います。
6月頃には、巣立ちを迎え、体の大きさも大人のトキとほぼ同じとなり、1人前になります。
繁殖期が終わると、野生では、その年に育ったトキを含む群れがつくられ、100羽以上が集まってねぐらをとることもあります。
<石川県トキスーパーバイザー 村本 義雄さん>
「小学校のころ、ここに分校があって、校庭で遊んでいるとトキが上空を回ったり、通過するのをよくみました。4年生から本校に通ったんですが、その道中にトキがねくらから飛んでくる、飛んできたときに羽ばたくと、羽の裏が太陽の光にあたる羽が金色に輝いて見えました。今でも忘れられない黄金色のトキ。私の心の中にずっと染み込んでいます。」
「この鳥は、田んぼに降りて、田んぼの中のタニシやドジョウ、ケラという昆虫を食べて生きてきた鳥です。トキを能登半島に放鳥することになったら、それまでに、トキが住む環境を新たに作らなければいけません。私の考えでは、ため池の現在使っていない場所をなんとかして活用していければと思います。地元の方々と相談し、農家の方々の協力を得て環境づくりに知恵をしぼらなければと思っています。」
「トキを、ずっと未来に引き継いでいく、子どもたちもトキを大事にして育てていく心を持つ、生きものに対するいたわりの心を持つ、そういう考えが、トキの保護につながります。」
トキが再び石川の空を舞う日が来ることを願いながら、人とトキが棲みやすい環境について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
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