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かつては県内各地で見ることができたトキ。
トキは、開発や乱獲など、人間の活動によって、一度は野生で絶滅してしまいました。
現在、いしかわ動物園などの施設で育てたトキを、かつての生息地、新潟県佐渡市に再び戻す取組が続けられています。
この取組を「野生復帰」と言います。
野生に戻したトキが、子どもを残し、全国に広がっていけば、絶滅を防ぐことにつながります。
早ければ、令和8年度となる能登地域でのトキの放鳥と、放鳥後の定着に向けて、佐渡市での野生復帰の取組をご紹介しながら、野生復帰がもたらしてくれる効果をお伝えします。
トキの野生復帰には、野生復帰させるトキを育てることが必要です。
いしかわ動物園や、佐渡トキ保護センターなどでは、毎年、野生復帰させるトキのヒナを育てています。
この広大な施設は、新潟県佐渡市にある「野生復帰ステーション」。
佐渡市の里山環境を再現したこの「野生復帰ステーション」で、いしかわ動物園などで育ったトキが約3か月間、空を上手に飛んだり、エサを捕まえたり、人の活動になれる訓練が行われ、野生で生きていくための方法を身につけます。
せっかくトキを生息地に戻しても、トキが安心して暮らしていける環境が整っていないと、トキは生き残れません。
トキは、田んぼに棲むカエル、ドジョウ、田んぼの畦にいるミミズやバッタなど、数多くの生きものを餌にします。
これらの生きものを増やす取り組みとして、佐渡市では、農薬や化学肥料を減らし、田んぼとその周囲に生きものが暮らしやすい環境を作り出す、人と生きものに優しい農業が行われています。
美味しいお米をつくるためには、水を抜き、田んぼを乾かす「中干し」が必要です。
この中干し期にも、生きものが生きていけるように、生きもののすみかとなる、「江」と呼ばれる溝を設けたり、雪が積もる冬の間も生きものが生きていけるように、水をためておく「ふゆみずたんぼ」を実施し、1年を通じて生きものが暮らせる環境を保っています。
田んぼの畦も、トキの重要な餌場となっています。
夏の間に稲の丈が伸びて、田んぼに入りにくくなると、畦で、ミミズやバッタなどを食べることが多くなります。
そのため、佐渡市では、除草剤を使わずに、丁寧に草刈りを行う努力が続けられています。
また、トキは、餌場の近くのスギやマツなどの林を営巣場所としており、森林環境の整備も必要です。
トキは臆病な性格で、人が近づくと、驚いて飛び立ち、十分に餌がとれなくなります。
そのため、トキを驚かせないようにすることはもちろん、トキが餌を採るなどの自然な行動を邪魔しないことが大切です。
一人ひとりがトキを優しく見守ることで、人とトキが共生する自然環境が守られます。
佐渡市では、これらのトキの棲める環境づくりが続けられ、平成20年から放鳥が行われています。
放鳥の方法には、箱の中に訓練したトキを一羽ずつ入れて放鳥場所に移動させ、一斉に箱を開けて野生に放す「ハードリリース」と、「野生復帰ステーション」で訓練したあとに扉を開放し、トキが自然に飛び立つのを待つ「ソフトリリース」の2種類があります。
放鳥は、春と秋の年2回行われています。
春は、トキのエサとなる田んぼの生きものが豊富な6月上旬頃に、秋は、群れに合流しやすく、稲刈り後の田んぼでエサを採ることができる9月下旬頃に行います。
佐渡市では、平成20年に、10羽のトキが野生に放鳥されました。
平成24年には、放鳥したトキが初めて野生での繁殖に成功、その後も放鳥が継続的に行われており、現在、多くのトキが佐渡市の空を舞っています。
トキを放鳥した後も、トキの行動を継続的に把握する、モニタリングが必要です。
佐渡市では、ほぼ毎朝、夜明けからトキの行動を調査し、観察した日時、餌場やねぐらなどの場所などを記録しています。
<環境省佐渡自然保護官事務所 自然保護官補佐 菅野 萌さん>
「モニタリングでは、足環が付いているトキの場合は、何番のトキがいるかを確認し、足環がついてないトキがいたら羽数を数え、どこで餌を食べていたのか、食べているものがわかったら、何を食べていたかを記録します。子育て時期のトキの場合、どういうところに巣を作っているか、親鳥の番号を読んで、何羽ヒナが巣立ったかなどをモニタリングしています。どんなところがトキにとって良い場所なのかなどのデータを集めることでトキが生きやすいような、生活しやすいような環境を調べることに役立てたり、みなさんに知っていただく、そういったことに活かしています。」
人とトキが、共生していくために大切なことはなんでしょう。
<有限会社齋藤農園 齋藤 真一郎さん>
「共生、共に生きるということは難しいことだと思います。自分の家族を考えてみても、やっぱり、誰かしら我慢をして暮らしていると思います。人間もある程度我慢をしていかなければいけないと思います。それが共生への第一歩かなと思います。我慢してるだけでは、窮屈になってしまうので、トキと暮らすということをどう楽しむかが大事だと思います。」
佐渡市の人たちにとって、トキはどのような存在なのでしょう。
「トキは佐渡の持続可能な社会づくりのシンボル的な存在になるだろうし、トキの野生復帰を通じて、みなさん自信を持ったと思います。佐渡の環境を良くしようと考えると、トキはいることで、佐渡を良くしていこう、佐渡を好きになっていこうという、愛着を持てる、郷土愛を作り上げるそういう存在なのかもしれません。」
佐渡市では、トキをシンボルとしたブランド米や各種の土産物がつくられています。
農薬・化学肥料を減らし、江の設置などの生きものに優しい農法でつくられたお米をブランド化し、「朱鷺と暮らす郷」として、生産しています。
環境に配慮した栽培方法で生産されたお米は、消費者にとって魅力があるものです。
トキを活用した観光として、飼育されているトキの公開施設や、保護の取組が学習できる資料館。
また、「トキのテラス」では、野生に生息するトキや、佐渡市の自然豊かな里地里山を観察することができます。
毎年、多くの観光客が佐渡市に訪れています。
トキを、かつての自然の生息地に再び戻す「野生復帰」の取組。
石川県で「野生復帰」の取組を進めていくためには、トキが再び舞うことができる、生きものが豊かな里地里山をつくること。
トキをやさしく静かに見守る環境をつくることが必要です。
トキとの共生を目指す取り組みを進めることは、それぞれの地域で住みよい環境をつくる、地域に対して誇りを持ち、地域を活性化することにもつながるのではないでしょうか。
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