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更新日:2010年4月7日

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対談・寄稿文 - 「三位一体の改革」について~真の地方分権への道筋~

去る6月27日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」(いわゆる骨太の方針2003)で、三位一体の改革について一定の方向性が示された。

その主な内容は、(1)国庫補助負担金を平成18年度までに約4兆円削減する(2)これに伴う税源移譲は基幹税目で行う(3)義務的経費は削減額の全額を、その他の経費は削減額の8割を税源移譲するというものである。

詳細は今後の予算編成の過程で決められることとなったものの、この議論に深く関わった者としては、三位一体の改革に向けての大きな出発点になったものと一定の評価をしている。

さて、この三位一体の改革の議論は、経済財政諮問会議での審議に先立ち、地方分権改革推進会議で16回の審議が行われ、6月6日に同会議から総理に意見書が提出された。私は、昨年12月、岡崎前神奈川県知事の後任として同会議の委員を拝命し同会議の審議に臨み、最終的にはその意見書全体に反対するという立場をとったので、まず、同会議の審議を振り返り説明したいと思う。

地方分権改革推進会議は、平成13年に設置され11名の委員で構成されているが、同会議の使命は、地方分権推進法に基づいて設置された地方分権推進委員会の後継機関として、真の地方分権型社会への道筋を示すことである。国からの税源移譲や国庫補助負担金の整理合理化、更なる権限移譲など積み残された課題に的確な提言を行うことが同会議の目的であると理解している。

しかしながら、これまでの審議の進め方を振り返ると、同会議は『分権改革推進』という名称を冠しているが、国の財政再建に力点が置かれ、『地方分権の推進』とはほど遠いものであったという印象を持たざるを得なかったのが残念である。どうも、地方は、放漫な財政運営を行っているという前提に立ち、地方の歳出をカットすることが国の財政再建につながるという考えが根底にあって審議が進められたように思う。

総理に提出された意見書の内容は、地方分権の根幹部分ともいうべき基幹税の税源移譲を明記していないほか、地方交付税をいわゆる法定分と地方財政対策分に分け、法定分は地方共同税(仮称)とし、地方財政対策分は削減し現行の交付税総額を約半分にするという、地方行政の現場に大きな混乱を招くものである。国の財政再建に主眼を置き、地方分権の流れを大きく逆行させるものである。このため、先程述べたように、私は、他の3名の委員とともに意見書全体に反対の意思を表明せざるを得なかったのである。

また、情報公開が進んでいる昨今でありながら、審議内容の公開性は極めて低く、審議内容を国民が正確に知ることができない前近代的なものであった。我々の指摘により、審議後半には、ようやく会議資料や議事概要が公開されるに至ったが、議事録は、現在(7月下旬)に至っても、昨年10月以降分が依然として公開されていない。

私は、三位一体の改革のあるべき姿を次のように考えている。

「三位一体の改革」とは、地方自治体が住民の意思に基づき、自己決定できるよう、地方の歳出規模と地方税収との乖離を縮小し、住民の受益と負担の関係を明確化することである。

そのためには、まず、税源移譲については、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築していくため、所得税、消費税を中心とした基幹税目を移譲する。

また、国庫補助負担金の見直しについては、各省庁ごとに数値目標を定め、具体的な計画を策定して順次進めていく。そして、見直しを行っても、引き続き必要とする事務事業については、地方への負担転嫁となるようなことが決してないよう、必要な財源を税源移譲により確保する。

そして、地方交付税であるが、主要な機能の一つは、国が法令や予算により定めた政策を財源的に担保することである。国は地方自治体が標準的な行政サービス水準を確保できるよう措置する責任を有しており、いわゆる「財源保障」とは、こうした文脈で捉えなければならない。その前提で、法令による歳出や事務事業の義務付けや国庫補助負担金等による国の関与の廃止・縮減や税源移譲と一体で検討し、交付税への依存度を低下させていかなければならない。

さらに、次の点を付言しておきたい。

歳入面の質の転換を図ることによって、住民の身近なところで歳出のチェックがより厳しくできるようになり、国・地方を通じた歳出抑制効果が働き、国民全体の負担もむしろ軽減される。

先般、岐阜県で全国知事会議が開催された。三位一体の改革についても多くの知事からの発言があったが、私は、開口一番、出席された片山総務大臣に対し「地方分権改革推進会議が小泉総理大臣に提出した三位一体の改革に関する意見書はどういう取り扱いになったのか。」と尋ねた。大臣のお答えは「三位一体の改革を議論した経済財政諮問会議には、資料として卓上配布されただけで議論されなかった。」ということであり、意見書に反対した委員の一人として安堵している。

先般開催された本年の全国知事会議は、これまでの「お願いする知事会議」から「闘う知事会議」へと転換する姿勢を鮮明にしたが、これからは、守りから攻めに転じつつ、具体的な改革案を積極的に国に提示していくべきであるという意見が相次いだ。年末の予算編成に向け、知事会として、削減する国庫補助負担金の項目などを具体的に検討することとなった。

地方分権とは、コップの中の国と地方の財源の分捕り合戦ではなく、住民ニーズに沿った効率的な行政サービスの提供体制を確立することである。地方分権とは地域をよくすること、そのことが国全体をよくすることにつながるのである。

その道のりは容易ではないが、地方が一枚岩となってこの正念場を攻めの姿勢で臨んでいかなければならない。それと同時に、「地方は放漫な行財政運営を行っている」という誹りを受けることがないよう、行財政改革を職員一丸となってしっかり実行し、県民ニーズに的確に応えるサービスの提供に日々努力していかなければならないと考えている。

 

(地方債月報  2003年8月号)

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