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更新日:2010年8月24日

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1. 有用林木遺伝資源植物のバイテクによる保存と増殖技術の開発(第2報)

予算区分      国補
研究期間      平成8~15年度
担当科名      森林育成科
担当者名      千木  容・三浦  進

I.はじめに

  森林は有用遺伝資源の宝庫であり、その保存については現地保存として実際に林分を保存したり、樹木園等を造成して別の場所に保存することが行われている。しかし、これら林分及び樹木園等で一定の個体数を確保していくには林地の維持管理等多大の労力及び費用が必要である。また、雪害、風水害等の気象災害により対象林木が消滅し、有用遺伝子の保存が極めて困難になる可能性がある。このため、少ないスペースで有用林木遺伝資源を効率的に保存しその活用を図ることを目的として、バイオテクノロジーを用いた新しい保存と増殖技術を開発する。これまでに、都道府県林業試験研究機関で開発してきた優良木の組織培養技術を核として生かし、森林総研における人工種子作成技術等の成果を利用して、地域に役立つ保存と増殖技術の開発を行う。

II.研究内容および結果の概要

(1)有用林木遺伝資源植物の組織培養技術の開発

  (1)植物組織片の効率的な採取と表面殺菌技術の開発

  • 対象とした有用林木ケヤキ、アテ、サクラの現在適当と考えられる殺菌条件は、新芽では0.1%アンチホルミンで30秒間処理、冬芽では1.0%アンチホルミンで5分間処理である。今回新たな条件として、ケヤキ新芽を0.1%アンチホルミンで10~30秒間処理殺菌を行ったところ、雑菌の汚染割合の差は見られなかった。また、ヤマザクラの冬芽を、0.5%アンチホルミンで30秒間処理殺菌を行ったところ、28%の雑菌の汚染割合で、多少の条件調整も必要と考えられる。  

  (2)種間差及び個体間差による培養条件の違いの解明と汎用性のある組織培養技術の開発・形成したケヤキシュートを供試して、適正な発根培地のホルモン条件を検討したところ、高濃度のIAAで発根するものや、IAAの条件では全く発根せずに低濃度のNAAで発根するものが見られた。

  • ケヤキおよびサクラをWP培地で培養し培地のpHを測定したところ、ケヤキは一旦pHが上昇した後低下したが、サクラは上昇せずに低下した。さらに、培養に使った培地中のNO3-とNH4+を定量したところ以下のとお  りとなり、吸収する窒素に形態に違いが見られた。

pH      NO3-(mg/l)   NH4+(mg/l)
ケヤキ    4.9    146    84
サクラ    3.9    296    64
WPM    5.9    536    92

(2)有用林木遺伝資源植物の保存技術の開発

  (1)超低温保存技術の開発
  ヒノキアスナロ(アテ)の育種を行っていくためには、現存する遺伝資源を将来にわたり消失から防ぎ、活用可能な状態に保っていく必要がある。そこで組織を試験管内で-150℃の条件で永続的に保存し、必要に応じて植物体に再生する技術の開発を行う。無菌培養の葉条先端部をエチレングリコール、グリセリン、DMSO、トレハロースの混合液に入れ超低温保存の後、融解し25℃で培養を行った。その結果52%の生存率が得られた。しかし葉条先端部は伸長を再開せず、植物体の再生には至らなかった。保存処理の過程で細胞の生理機能に障害を与えた可能性が高く、保存液の組成や処理方法を検討していきたい。

(3)組織培養苗増殖技術の開発

  (1)バイオ苗の効率的な順化手法の開発

  • 炭酸ガスの施用効果を見るため、アテの長さ10cmの小葉をさし木してその効果を検討したところ、試験開始後50日目の発根率は以下の通りであった。

コントロ-ル    CO2施用区
個体(1)    13%    45%
個体(2)    6%    33%

  • ケヤキ発根培養を行った後、未発根だったものについてフロリアライトおよびバーミキュライトを支持体にして、無菌下でダイレクトルーティングを行った。その結果、個体によっては発根するものが見られたが、全く発根しない個体も見られた。また、支持体による発根率の明らかな差は認められなかった。

III.今後の問題点および検討事項          

  • ケヤキ、アテ、ヤマザクラ等の植物組織片の採取と表面殺菌技術に課題があるものについて効率的に殺菌可能な外植体形成方法を開発する。
  • イオンクロマト法によるアンモニウムイオンのデータとアンモニウムイオン計によるデータを比較検討する。
  • ガラス化による細胞の損傷を低減するため、供試組織の形状、細胞の脱水法、ガラス化液の浸せき時間、解凍後の浸透圧調節法について最適条件を検討する。
  • ケヤキについては、順化が困難な個体が多いので二酸化炭素施用等の方法 を検討し、順化法を確立する。
  • フロリアライトおよびバーミキュライトを支持体にして、ダイレクトルーティングを行い、発根後の順化率を含め有効性を評価する。
  • 植物体の再生時期によって環境順化可能な手法を検討する。

 

お問い合わせ

所属課:農林水産部農林総合研究センター林業試験場

石川県白山市三宮町ホ1

電話番号:076-272-0673

ファクス番号:076-272-0812

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