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[ご注意] 事例は実際のものではありません。
組合は、非組合員に比べて、組合員の昇格が遅れているのは、組合員であることを理由とする不利益取扱いであるとして、公平な昇格の実施と昇格差別により生じた非組合員との賃金格差分の支払いを求めて、労働委員会に救済を申し立てました。
これに対して、会社は「昇格は、勤務成績に応じて公平に行っており、差別扱いはしていない。」と主張しました。
組合員であることを理由として労働条件について、非組合員と差別し、その結果組合員に賃金格差などが生じる場合は、労働組合法第7条第1号によって禁止された不当労働行為(不利益取扱い)に該当します。
労働委員会において審査した結果、会社の行った組合員に対する昇格差別には、合理的な理由が認められず、組合を嫌悪して行われた不当労働行為であると判断し、会社に対して、組合員に対する公平な昇格の実施と昇格差別により生じた賃金格差分の支払いを行うよう命令しました。
組合は、会社が組合の分会書記長を他の工場に配置転換したのは、分会の中心的活動家である書記長を排除し、組合を弱体化するために行われた不当労働行為であるとして、書記長の元職場への復帰を求めて、労働委員会に救済を申し立てました。
これに対して、会社は「配置転換は業務上の必要性から行ったものである。」と主張しました。
労働組合及びその組合員には、正当な組合活動を行うことが認められています。
組合に加入したことや正当な組合活動を行ったことを理由として、解雇や配置転換、昇格差別などを行った場合は、労働組合法第7条第1号によって禁止された不当労働行為(不利益取扱い)に該当します。
労働委員会において審査した結果、分会書記長の配置転換には合理的理由がなく、組合活動を嫌悪して行われた不当労働行為であると判断し、会社に対して、配置転換を撤回し、分会書記長を元の職場に復帰させるよう命令しました。
組合の執行委員長は、3年前に酒気帯び運転で検挙されたことが発覚したとして会社から懲戒解雇の処分を通告されました。
組合は、これに対して、会社が日頃から組合を嫌悪しており、組合の活動が活発化してきたことから、組合の中心的活動家である執行委員長を、たまたま発覚した酒気帯び運転の事実にこと寄せて、解雇することにより、組合から排除し、組合の弱体化を図ろうとした不当労働行為であるとして、解雇撤回等を求め、労働委員会に救済を申し立てました。
これに対して、会社は、「就業規則に基づき適正に処分したものであり、不当労働行為に当たらない。」と主張しました。
会社に処分を正当化する形式的な理由があったとしても、会社の組合弱体化を図る意思が解雇の決定的な動機である場合は、不当労働行為に当たる可能性が高いと思われます。
この事例では、就業規則には解雇事由として「酒気帯び運転」が規定されていますが、これまで事故等を伴わない同様のケースでは、重くとも出勤停止処分にとどまっており、解雇された従業員がいないことが判明しました。
加えて、会社の日頃からの組合に対する言動や態度などから、執行委員長に対する解雇が組合の弱体化を図る意思を決定的な動機として行われた不当労働行為であるとして、会社に対して、解雇を撤回し、執行委員長を元の職場に復帰させるよう命令しました。
組合は、会社に対して、業務上災害による療養のため休業中の組合員が解雇されたことについて、解雇撤回等を要求して団体交渉を申し入れました。
しかし、会社が団体交渉に応じなかったため、組合は労働委員会に団体交渉応諾を求めて救済を申し立てました。
これに対して、会社は「組合員と会社との雇用関係はすでに終了しているため、組合との団体交渉に応じる必要はない。」と主張しました。
使用者が正当な理由なく団体交渉を拒むことは、労働組合法第7条第2号の規定により禁止された不当労働行為に該当します。
労働者の地位や賃金などの労働条件に関する事項は、義務的団交事項であり、労働組合が団体交渉を求めた場合、使用者はこれに応じなければなりません。
労働委員会において審査した結果、会社が団体交渉に応じないことには正当な理由が認められないと判断し、会社に対して、誠意をもって団体交渉に応ずるよう命令しました。
組合は、団体交渉において、会社から提案のあった従業員の年間勤務計画の変更について、会社の説明を求めましたが、十分な説明のないまま、勤務計画の変更が行われました。
組合は、会社が団体交渉において、変更の理由や、根拠となる資料を十分組合に示さず、説明責任を尽くさないのは、不誠実団交に当たるとして、労働委員会に救済を申し立てました。
これに対して、会社は「組合に対して必要な場合には資料を提供し、説明しており、団体交渉に誠実に応じている。」と主張しました。
団体交渉において、使用者には、相手方が理解することができるように、論拠や資料を提示するなど、誠実に交渉に当たる義務があり、団体交渉に応じていても、組合への誠実な対応が十分に行われていない場合には、不誠実団交として、労働組合法第7条第2号で禁止されている団体交渉拒否に該当すると判断されることがあります。
労働委員会において審査した結果、この事例については、誠実な対応がなされていないと判断し、会社に対して、具体的な資料等を用いて説明するなど、誠実に団体交渉に応ずるよう命令しました。
組合は、賃金引上げについて、会社と団体交渉を行っていましたが、会社は、組合が社長の出席を求めているにもかかわらず、総務部長が出席し、組合の要求に対して、その場で即答せず「持ち帰って検討する」との回答を交渉の度に繰り返すばかりで、一向に進展しないことから、不誠実団交に当たるとして、労働委員会に救済を申し立てました。
これに対して、会社は「総務部長を交渉担当者として、団体交渉に誠実に応じており、交渉が妥結しないのは、双方の主張に隔たりがあるためである。」と主張しました。
会社の代表者である社長が、団体交渉に出席し、妥結し、協約を締結できることはいうまでもありませんが、交渉権限の委任を受けている役員や部長なども、交渉担当者となることができます。ただ、交渉担当者は、妥結権までが付与されているとは限らないので、委任の範囲を超えた事項については、持ち帰って検討する場合も考えられます。
この事例については、その場で回答できない理由の説明を尽くさず、持ち帰って検討することばかりを繰り返したという事実が認められたので、交渉の引き延ばしを図った不誠実団交であるとして、会社に対し、社長の出席や交渉担当者に適切な交渉権限を付与するなど、誠意をもって団体交渉に応ずるよう命令しました。
会社の社長が、団体交渉において「組合ができると会社は潰れる。組合は嫌いだ。」、「このような組合では会社経営の妨げになる」などと繰り返し発言するのは、組合員の動揺を誘い、組合からの脱退を勧奨し、組合の弱体化を図る支配介入に該当するとして、組合は労働委員会に救済を申し立てました。
これに対して、会社は「労働組合に対する知識が乏しく、どのように対応していいのかわからなかったものであり、不当労働行為意思によるものではない。」と主張しました。
使用者が、労働組合を誹謗・中傷するなど、組合弱体化を図った発言や行動をすることは、組合に対する支配介入として、労働組合法第7条第3号により禁止された不当労働行為に該当します。
この事例では、労使参与委員が、各々使用者と組合を説得した結果、双方の誤解が解消され、会社と組合が互いの立場を尊重し、協力して経営改善に取り組んでいくことで和解が成立し、組合は救済申立てを取り下げました。
会社内の少数組合であるA組合は、会社は多数組合であるB組合に対しては組合事務室や組合掲示板の貸与などを認めているのに、A組合には認めないのは、組合間で取扱いを異にした差別扱いであり、不当労働行為に当たるとして、労働委員会に救済を申し立てました。
これに対して、会社は、「社内会議室の使用や、会社掲示板の使用を認めるなど、A組合にも便宜を図っている。」と主張しました。
労働者が労働組合を結成し、又は運営することを支配し、又はこれに介入することは、労働組合法第7条第3号により禁止された不当労働行為(支配介入)に該当します。
また、2以上の労働組合が併存する場合において、どちらか一方の組合に対してのみ、便宜を供与したり、優遇し、又は不利益な取扱い等の行為をすることも、組合の運営に対する支配介入として、不当労働行為に該当します。
労働委員会において審査した結果、この事例では、会社がB組合に対して、組合事務所及び組合掲示板を貸与しているにもかかわらず、A組合に貸与していないのは、合理的な理由がなくA組合の弱体化を図った不当労働行為であると判断し、会社に対して、A組合にも、組合事務所と組合掲示板を貸与するよう命令しました。
新たに結成されたA組合は、従前からあったB組合の組合員については、労使協定によりチェックオフ(賃金からの組合費の天引き)が行われていたことから、会社に対し、チェックオフの要求を行いましたが、特段の理由を示すことなく拒否されたため、組合間で取扱いを異にした差別扱いであり、不当労働行為に当たるとして、労働委員会に救済を申し立てました。
これに対して、会社は、「賃金は、直接払いが原則であり、チェックオフに応ずる義務はない。」と主張しました。
チェックオフは組合の運営に資する財政基盤を支えるものとして重要な役割を果たすものであることから、従前から行っているチェックオフを組合の了解を得ずに会社の都合で一方的に廃止することや、併存する一方の組合にのみチェックオフを認めないことは、組合の運営に支配介入するものとして不当労働行為となる場合があります。
この事例の場合は、組合間差別により組合の弱体化を図ろうとした不当労働行為であるとして、2つの組合を平等に扱い、A組合の組合員についても、所定の手続きによりチェックオフを行うよう命令しました。
組合は、労働委員会に不当労働行為救済申立てを行い、証言を行った組合員に対して、会社が通勤の困難な関連会社に出向を命じた行為は、不当労働行為救済申立てを理由とする報復的な不利益取扱いであるとして、出向命令の撤回を求めて、労働委員会に救済を申し立てました。
これに対して、会社は、「出向は、業務上の必要によるものであり、受忍の範囲内である。」と主張しました。
労働者が不当労働行為の救済申立てをしたことや、労働委員会の審査の過程において発言したことなどを理由として不利益な取扱いをすることは、労働組合法第7条第4号により禁止された不当労働行為に該当します。
労働委員会において審査した結果、会社が組合員に対して行った出向命令については、合理的な理由は認められず、組合員が労働委員会で会社に不利益な証言を行ったことに対する報復として行った不当労働行為であると判断し、会社に対して、出向命令を撤回するよう命令しました。
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