ホーム > 県政情報・統計 > 知事のページ > 県議会の議案説明要旨 > 議案説明要旨(令和7年第2回県議会定例会) - 令和7年6月10日 - > 令和七年第三回石川県議会定例会知事議案説明
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本日、ここに、令和七年第三回県議会定例会が開かれるにあたり、最近の県政の状況と提案をいたしました一般会計補正予算及び特別会計補正予算並びにその他の諸議案につきまして、その大要をご説明申し上げます。
はじめに、先月六日からの大雨につきましては、七日明け方に線状降水帯が発生し、金沢市で二十四時間雨量が観測史上最大となったほか、十日以降は能登地域を中心に降雨が続き、記録的な大雨となりました。道路崩落による重軽傷者三名のほか、十一の河川や広範囲の内水の氾濫、高潮などにより、九百棟を超える住家被害や、道路、河川、農地・農業用施設、金沢競馬場などに甚大な被害が発生いたしました。被害に遭われた皆様方に対しまして、心からお見舞いを申し上げます。
県では、七日の「顕著な大雨に関する気象情報」の発表と同時に災害対策本部を設置し、同日中に金沢市に災害救助法を適用いたしました。私自身、被災状況を現地で確認し、被災箇所の応急復旧などに、国や市町など関係機関と連携し、全力で取り組んできたところであります。
先月二十七日には、国に対して、今回の大雨による被災施設の復旧支援などを直接要請いたしました。本県を含む全国各地の大雨災害は、激甚災害に指定される見込みであり、国には、災害査定を速やかに進めていただくとともに、県としては、引き続き、関係機関と連携し、被災施設の本格復旧や、被災された方々の生活再建、事業再建などに全力で取り組んでまいります。
国道二四九号七尾市中島町小牧地内の道路崩落箇所については、これまで二十四時間体制で応急復旧を進め、今週中には通行止めを解除できる見込みとなりました。
金沢競馬場につきましては、コースやきゅう舎地区を含む敷地が広範囲に浸水したほか、競走馬約六百頭が水に浸かり、八日間のレース中止を余儀なくされましたが、コースの復旧や馬の健康管理などに努め、昨日からレースを再開いたしました。今後、速やかに、浸水したきゅう舎等の修繕を行うとともに、災害時の馬の早期避難を含めた安全確保に向け、馬主や調教師など関係者との意見交換を進めてまいります。
今回の大雨被害を踏まえ、来年の出水期までに、県下全域で緊急的な防災・減災対策に取り組むことといたしました。
具体的には、県下全域の河川を緊急的に総点検した結果、新たに土砂の堆積が確認された三十四河川について、堆積土砂を除去するほか、冠水・高潮対策として、河川・港湾の護岸や道路舗装の嵩上げ、道路アンダーパスの排水機能の強化、応急仮設住宅への大型土のうの設置などを実施いたします。
また、特に被害の大きかった河北潟周辺と能登の内浦沿岸部については、今月二日に立ち上げた国、県、市町からなる協議会において、被害状況や要因などを検証し、「冠水・高潮対策プラン」を年度内に策定し、来年度以降、総合的な対策を講じてまいります。
被災事業者への支援につきましては、浸水被害などが百件以上発生したことから、施設・設備の復旧に対し、最大二百万円を支援することとし、特に、昨年の地震・豪雨に加え、今回の大雨で再度被災した事業者については、最大三百万円まで支援いたします。
さらに、専門家派遣制度の派遣枠を拡大するとともに、無料派遣回数の上限を撤廃し、被災事業者からの相談にきめ細かく対応してまいります。
被災農家への支援につきましては、農業機械の再取得や営農再開に必要な経費などを支援することとし、営農継続をハード・ソフト両面から支援してまいります。
今回提案をいたしました補正予算におきましては、これまで申し述べた大雨災害からの復旧をはじめ、六月補正予算編成後における情勢の変化や事業の進捗などにより、現時点で新たな対応が必要となったものについて編成をいたしました。
以下、主な施策につきまして、六月補正予算編成後の取組の進展状況も併せ、その概要をご説明申し上げます。
まず、「能登半島地震・奥能登豪雨からの復旧・復興への対応」についてであります。
令和六年能登半島地震から一年八カ月余り、奥能登豪雨から一年近くが経過いたしました。豪雨発生から一年を迎えるにあたり、犠牲になられた方々を追悼するため、今月二十一日に、輪島市、珠洲市、能登町の庁舎等及び県庁一階に献花台を設置するとともに、私自身、三市町を訪問し、献花並びに黙とうを捧げます。
応急仮設住宅につきましては、原則二年以内とされる供与期間について、国との協議の結果、被災者の事情に応じて、当面、一年間の範囲で延長が可能となったことから、七月から市町とともに延長手続きを開始いたしました。
住まいの再建につきましては、先月から能登六市町で「いしかわ型復興住宅」モデルプランの提案事業者等による相談会を順次開催しており、今月二十日には、みなし仮設住宅の入居者等を対象に金沢市でも開催いたします。
また、住宅の応急修理制度については、様々な事情により期限である年内の修理完了が困難な場合もあることから、国との協議の結果、当面は完了期限を設けず、申請期限を来年九月末まで延長することといたしました。
液状化に伴う側方流動により被害を受けた宅地・住宅の復旧につきましては、土地の境界確定が大きな課題となっており、県の要請を受け、国のプロジェクトチームにおいて、検討が進められ、今月一日、土地境界再確定の期間の大幅な短縮を目指す「土地境界再確定加速化プラン」が取りまとめられたところであります。今後、このプランに基づき、国、県、市町はもとより、被災地の土地所有者など関係者が連携して効率的に対応を進めることで、早期の住宅再建を目指してまいります。
復興公営住宅につきましては、九市町で約三千戸の整備が必要とされる中、先月までに穴水町で工事着手したほか、羽咋市など三市町においても、年度内の工事着手に向けて準備が進められており、引き続き、市町を支援してまいります。
被災者の生活再建につきましては、地域支え合いセンターによる見守り活動を通じ、今後の生活再建の確認を行うとともに、自力での生活再建や住まいの確保に課題を抱える世帯に対しては、六月に金沢市内に「いしかわ被災者支援センター」を開設し、生活再建支援アドバイザーによる伴走支援を行っております。今後、恒久的な住まいへの移行が本格化する中、増加が見込まれる被災者からの相談にきめ細かく対応できるよう、アドバイザーを現在の八名から十二名に増員し、支援体制を強化いたします。
奥能登地域の障害者支援につきましては、穴水町にある県立の障害者支援施設である精育園が地震により甚大な被害を受けており、建物や地盤の被害状況を踏まえ、移転したうえで、新たな施設を整備することといたしました。関係者や学識経験者等からなる検討会を立ち上げ、移転先の立地条件、個室化など、近年の障害者支援施設としてふさわしい機能や規模等について、検討を進めてまいります。
また、障害者から市町に寄せられる相談については、被災後の生活環境の変化により、件数が増加し、内容も複雑化していることから、県相談支援専門員協会と連携し、被災市町への専門家の派遣により、相談支援体制の強化につなげてまいります。
被災事業者の生業の再建につきましては、能登六市町では、現時点で、約九割の事業者が営業を再開した一方、本格的な営業再開は約七割であり、引き続き、能登事業者支援センターによるプッシュ型支援により、「なりわい再建支援補助金」の申請をさらに後押ししてまいります。
また、「営業再開支援補助金」や「チャレンジ支援補助金」については、想定を上回る申請があることから、予算枠を大幅に拡充いたしました。
起業支援につきましては、地域外の方が被災地でのボランティア活動を通じて能登に愛着を持ち、起業を目指す動きが活発化しております。そのため、新たに、生活基盤の確保と起業支援を組み合わせた「能登起業チャレンジ応援プロジェクト」を創設いたします。
具体的には、のと里山空港敷地内に滞在施設としてコンテナハウスを二十棟整備するほか、能登事業者支援センターに地域おこし協力隊による起業支援の専門人材を配置するとともに、「起業促進補助金」の予算枠を拡充いたします。
輪島塗の創造的復興につきましては、先月の第三回検討委員会において、輪島を「漆芸の聖地」とする目標を掲げ、若手人材の養成施設の整備を核に、魅力発信や海外販路開拓の取組を盛り込んだ基本構想を策定いたしました。養成施設は、県輪島漆芸美術館の隣接地に建設し、産業観光の機能も備える予定であり、施設整備に向けて基本設計に着手し、施設の運営やカリキュラムについても具体の検討を進めてまいります。
また、輪島塗の復興には、県民の輪島塗への理解を深め、将来の人材確保を図ることが重要であります。児童生徒を対象とした輪島塗の制作体験会や県民フォーラムを開催するほか、県立美術館では、来年夏に、輪島塗の魅力を発信する特別展を開催し、県民の機運醸成に取り組むことといたしました。加えて、輪島塗の海外展開を見据え、輪島塗の作り手や経営者などに対し、海外市場に精通した専門家による勉強会を開催いたします。
営農の再開促進につきましては、七月に、奥能登の四地域で意見交換会を開催し、私自身が農家の方の声を直接お聞きするとともに、農地復旧の見通しや営農再開の支援策をお示しいたしました。農地復旧の進捗に伴い、農業機械・施設等の再取得に係る支援制度への申請が増加していることから、予算枠を拡充することといたしました。
また、水稲の収穫後、農地集約やほ場整備に向け、集落での協議が本格化することから、協議を円滑に進めるためのコーディネーターや、課題に応じた専門家を集落に派遣し、集落の合意形成を後押ししてまいります。加えて、営農再開に前向きに取り組む機運の醸成に向け、農業者や関係機関などが一堂に会する「奥能登営農復旧・復興フォーラム(仮称)」を十二月上旬に穴水町で開催いたします。
漁業に利用されている港につきましては、被災した七十二港のうち、九割を超える六十七港で利用が再開されました。輪島港では、海士地区全体の浚渫を終え、七月から海女によるアワビ・サザエ漁が再開されたほか、鹿磯漁港でも船揚場の応急復旧が完了し、小型漁船の利用が可能となりました。また、国が権限代行により復旧を進めている小木港において、岸壁の本復旧が一部完了し、今月五日から漁船の利用が開始されました。
地震の影響で運休していたへぐら航路につきましては、七月三十日から島民等に限って週一便で運航が再開され、今月からは週二便に増便されております。
和倉温泉の復旧につきましては、現在、国や県において、温泉旅館の再建に必要な全区間で倒壊した護岸の復旧工事を進めており、来年度中の完了を目指してまいります。
能登の観光振興につきましては、宿泊施設の受入再開が本格化するまでの間、「今行ける能登」として発信し、誘客を図っております。ポケモンの人気キャラクター「ピカチュウ」が能登の観光スポットを巡るPR動画を七月から順次配信しているほか、アジア圏からの誘客再開に向けた現地旅行会社の招へいなど、さらなる誘客に取り組んでまいります。
修学旅行の誘致につきましては、三月に震災学習プログラムを策定し、先月、モニターツアーとして首都圏や関西圏の学校関係者を招へいし、プログラムを体験いただきました。十二月には旅行会社の招へいも予定しており、参加者からのご意見を踏まえ、プログラムに一層磨きをかけ、本県への修学旅行の誘致につなげてまいります。
のとじま水族館につきましては、(公財)日本財団の協力により、アスリートによる社会貢献プロジェクト「HEROs」と連携したマーメイドショーなど、様々なイベントを実施し、夏休み期間中は、昨年の約三倍となる八万人を超える方にご来場いただきました。
文化財につきましては、損壊した建物の中に残された美術工芸品等を救出する文化財レスキュー事業により、現時点で二百三十一件を救出しております。これらを広く周知するため、救出された文化財の特別展を県立歴史博物館で七月二十六日から八月末まで開催し、約八千人の皆様にご来場いただきました。
公費解体につきましては、申請棟数の推移などを踏まえ、七月末に公費解体加速化プランを見直し、解体見込棟数を約三万九千棟から約四万五千棟に改め、先月末時点で、その約八割となる三万五千棟余の解体が完了しております。
一方、解体棟数の増加等による費用の増嵩に伴い、市町の資金繰りがひっ迫する状況にあったことから、先月二十七日、国に対し、予算の確保を直接要請した結果、今月二日に予備費の使用決定がなされ、当面必要な額が確保されたところであります。引き続き、原則十月末までの解体工事完了、来年三月末までの廃棄物処理完了を目指し、国や市町、関係団体と連携し、取り組んでまいります。
奥能登地域の災害復旧工事の入札不調対策につきましては、地元の建設業者が既に多くの工事を受注し、現場技術者の不足などにより、入札不調が複数発生していることから、大規模な復旧工事については、来月の公告から県内に営業所を置く県外建設業者も特定JVの代表者として認めるなど、入札参加要件を緩和することといたしました。
防災対策の充実強化につきましては、地震検証委員会から提出された報告書で指摘された、県の災害対応体制や受援・応援体制、被災者支援等の初動対応に関する課題を整理し、今月四日に臨時の石川県防災会議を開催し、地域防災計画に反映したところであります。
今後、災害時の初動対応に関する各種マニュアルの整備をはじめ、研修を通じた人材の育成や災害対策本部室等の機能強化、道路啓開計画の策定など、新たな防災対策に取り組み、災害対応力の強化を図ってまいります。
津波対策については、五月に公表した地震被害想定を踏まえ、津波への備えが急務であることから、国による地形変動等の調査を待つことなく、専門家による検討会を立ち上げ、津波浸水想定の見直しに着手いたします。
高齢者や障害者等に係る個別避難計画については、県内外の先行事例の紹介やアドバイザーの活用を通じて、市町における早期の計画作成を後押ししてまいります。特に、被災市町では、復旧・復興業務による人手不足や、応急仮設住宅の避難体制の確保といった課題を抱えていることから、見守り・相談支援を行っているNPO等との連携により、計画作成を支援してまいります。
(一社)能登官民連携復興センターにつきましては、ロックユニット「COMPLEX」 などから頂いた多額の寄附金を活用し、先導的な取組を支援しているところであり、七月に一次公募の助成先として六件を決定いたしました。引き続き、新たに「小規模枠」を設け、二次公募を行っているところです。
義援金につきましては、地震分として八百十一億円を超える額が、豪雨分として五十一億円を超える額が寄せられており、改めて心より感謝申し上げます。先月の配分委員会において、地震分の第五次配分、豪雨分の第二次配分として、人的・住家被害に応じた配分額をさらに積み増すことが決定され、現在、各市町で配分手続が進められております。
地震・豪雨の記憶の風化防止につきましては、十一月に東京都内で復興祈念シンポジウムを開催し、皆様から寄せられた温かいご支援に対し、感謝の意を表するとともに、創造的復興の歩みと未来への展望を広く発信してまいります。また、能登で困難を乗り越えて生きる人々に焦点を当てた動画を制作し、先月二十七日から動画サイトなどで全国に発信しており、今後も、新たな動画を順次公開し、能登への関心をつなぎとめ、風化防止につなげてまいります。
関係人口の拡大につきましては、これまで、本年五月に立ち上げた「関係人口官民連携協議会」で検討を進めてきたところであり、都市部の方々に加え、やむを得ず転居された被災者等を関係人口と捉え、地域と関係人口をつなぐマッチングプラットフォームとして、関係人口の登録システムの運用を十一月から開始いたします。今後、市町の地域住民との交流プログラムの造成などを支援するとともに、首都圏でのイベント時など様々な機会を捉えて情報発信し、関係人口の登録を促進してまいります。こうした取組を通じて、多くの方々の継続的な地域とのつながりにつなげてまいります。
いしかわサテライトキャンパスにつきましては、学生による地域課題の解決や各種ボランティア活動を通じた地域との交流を促進するプログラムを設け、県内外の大学等から募集しております。本年度は七百名の受入れを目標に掲げ、これまでに、目標を上回る県内外の五十九の大学等、約七百二十名の学生から応募があるなど大変好評であり、順次受入れを進め、能登の祭りの担ぎ手や農地の復旧作業の手伝いなどの活動が行われております。
能登の財産であり、地域の絆となっている祭りにつきましては、本年は昨年の一・五倍となる百三件が開催される見込みであります。これまでに、「祭りお助け隊」として、十五の祭りに県内外から三百名を超える方が参加しており、引き続き、地域とのマッチングを進め、一つでも多くの祭りが再開できるよう取り組んでまいります。
能登駅伝につきましては、今月二日から三日にかけて、陸上競技関係者や関係市町からなるワーキンググループによる現地視察を行い、コースや中継所などの候補地を確認しながら、様々なご意見を頂いたところであります。年度内の基本計画案の策定に向けて、復興の象徴として、記録より記憶に残る大会を目指し、引き続き、検討を進めてまいります。
トキの放鳥につきましては、七月に、能登地域トキ放鳥受入推進協議会において、放鳥場所を羽咋市南潟地区に決定いたしました。引き続き、放鳥ケージの設置や観察マナーの普及啓発、放鳥式の開催など、来年六月頃の放鳥に向けた準備に万全を期してまいります。
また、トキを活用した米などのブランド化に向け、来月にはトキのシンボルマーク等を公表するとともに、年内にもトキの生息に配慮した米づくりの認証制度を創設し、県内外でのPR活動を通じて、消費者への理解促進や販路開拓を後押ししてまいります。
ジオパークなど震災遺構の地域資源化につきましては、六月から能登六市町において地域資源を把握する文献及び実地調査を実施しており、今後、輪島市及び珠洲市で詳細調査を行うほか、勉強会を開催し、関係者との認識共有を図ってまいります。
「のとSDGsトレイル(仮称)」につきましては、先月、国とともに勉強会を開催し、先行事例を踏まえ、市町や民間団体などと意見交換を行いました。引き続き、ルートや運営方法など課題の整理を進めてまいります。
ふるさと教育につきましては、全ての県立高等学校で創造的復興をテーマとした活動を行っており、奥能登の五校では、七月から復興探究コーディネーター二名が巡回し、地域と学校との連携の促進や教員を対象とした合同研修会の開催など、探究活動の支援に取り組んでおります。奥能登以外の高等学校でも、震災遺構の見学をはじめ、能登でのフィールドワークなどを実施しており、約二千名が参加を予定し、これまでに十七校、約八百名が参加いたしました。
また、私自身、奥能登地域の小中学校及び高等学校をこれまで九校訪問し、子どもたちと意見交換を行い、地震や豪雨後の体験や将来の夢などを聞いてまいりました。来月には、さらに輪島市及び穴水町の九校を訪問し、子どもたちの声を受け止め、復興に活かしてまいります。
「奥能登版デジタルライフライン」につきましては、地震・豪雨の経験や教訓を踏まえ、日常的な運用が非常時にも活かせる「フェーズフリー」の考えに基づき、ドローンによる撮影の平時・有事両面での活用や、災害時の被災者情報把握に備えた、マイナンバーカードとスマートフォンの連携など、デジタル技術を活用した実証に取り組んでまいります。
ドローンについては、KDDI㈱と昨年十月に包括連携協定を締結し、これまで様々な場面での活用を検討してまいりました。その結果を踏まえ、同社が能登に配備予定の高性能ドローンを行政や民間が利用料を支払い、平時には、河川や海岸などのインフラ管理やパトロールなどに活用するとともに、災害時には、被災現場の初動調査に活用する、全国初のモデルの構築に向けた取組を支援してまいります。
能登半島絶景海道の整備につきましては、引き続き、ルート等の検討を進めるとともに、今月十日から、ロゴマークの一般投票を行うこととしております。国の権限代行により復旧を進めている国道二四九号の外浦沿岸部については、令和十一年春までの復旧完了の見通しが示されたところであり、国と連携し、復旧を進めてまいります。また、能登半島絶景海道におけるサイクルツーリズムの推進に向け、今月下旬に輪島市や珠洲市で体験イベントを実施し、参加者のご意見も踏まえて、受入環境の整備を図ってまいります。
能登地域の公共交通につきましては、先月末に、法定協議会を開催し、住民アンケート等の結果に基づき、路線バスの維持・改善やAIオンデマンド交通を含めた新たな交通手段の導入など、第二次計画の方向性をお示ししたところであり、年度内の策定に向け、検討を進めてまいります。
次に、「石川県成長戦略の更なる推進」についてであります。
最近の本県経済は、緩やかに持ち直しているものの、原材料価格の高止まりや電気料金などエネルギーコストの上昇に加え、米国の関税引上げ、さらには、最低賃金の引上げにより、幅広い業種において、経営への影響が深刻化することが懸念されております。
本県の最低賃金につきましては、先般、過去最大となる七十円の引上げが決定され、来月八日から適用されることとなりました。最低賃金の引上げは、賃金水準の底上げや人材確保の観点から重要である一方、物価高騰が続く中、中小事業者、とりわけ被災事業者にとっては大きな負担であることから、過去に例のない思い切った対策を十億円規模で講じることといたしました。
具体的には、賃上げ環境の整備に向け、国助成金の対象とならない、ITシステム導入や従業員のスキルアップ研修といったソフト事業を県独自に支援し、小規模事業者は五分の四、中小企業は四分の三の手厚い補助率により、最大百万円を助成いたします。
加えて、最低賃金の引上げが、地震・豪雨からの生業再建の腰折れにつながらないよう、直接的な緊急支援として、被災した小規模事業者を対象に、賃上げ人数に応じて最大十人、一人あたり五万円の支援金を支給いたします。
併せて、こうした補助制度も活用し、生産性向上や収益力の強化が図られるよう、専門家による伴走支援体制を強化いたします。
今月三日には、行政、経済団体、労働団体の代表による政労使会議を石川労働局との共催で開催し、今ほど申し述べた県の支援施策を紹介するとともに、持続的な賃上げの実現に向け、各団体に協力を直接要請したところであります。
米国関税対策につきましては、七月に、国、金融団体、支援団体と連携し、最新情報を提供するセミナーや個別相談会を開催したほか、先月には、第三回となる石川県米国関税対策会議を開催し、関税の影響に関する情報共有を図ったところであります。
また、七月に創設した経営安定支援融資の米国関税枠については、先行きを懸念する県内企業から既に四十五件の利用があり、引き続き、専門家派遣や金融支援などを通じて、県内企業のセーフティネット対策に万全を期してまいります。
産業人材の確保につきましては、人手不足が恒常化する中、省力化につながるDXや外国人材の確保・定着の取組を一層進めていく必要があります。
まず、DXの取組については、企業のロボット導入への関心が高まっていることから、現地指導を行うアドバイザーの派遣枠を拡大するとともに、本格導入前のトライアル実証に対して新たに支援することといたしました。
また、外国人材の確保・定着については、県自動車販売店協会とベトナムのハイフォン社、県の三者で締結した連携協定に基づき、先月から七名のベトナムからの受入れが開始されています。こうした取組について、他の業界への横展開を図るため、業界団体のニーズなどを把握する研究会を開催することといたしました。
大阪・関西万博につきましては、先月二十七日からの五日間、「石川の日」として、本県の魅力である「祭り」や「食文化」をテーマとした催しを開催いたしました。同期間の万博来場者の約一割に相当する約九万四千人が訪れ、来場者アンケートでは、「石川県に行ってみたい」との多くの声を頂いており、本県の魅力を存分に発信することができたものと考えております。
昨年七月に、北陸三県共同でオープンした大阪の情報発信拠点「HOKURIKU+」につきましては、好調に推移し、年間の来店者数が約百六十万人、店舗全体の累計売上は約三億二千万円となりました。
海外への販路開拓につきましては、今年度、新たに「北陸三県輸出促進協議会」を設置し、現在、米国で北陸三県連携による食品の販売プロモーションを実施しているほか、「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを背景に、北陸三県とその酒造組合が連携し、十一月にフランスで日本酒の販路開拓プロモーションを開催いたします。
加賀料理につきましては、七月末に、国無形文化財への登録に必要な保持団体として、「加賀料理技術保存会」が設立され、約六十名の料理人等が会員となり、この秋の登録を目指し、準備を進めてまいります。
本県の特色ある農林水産物につきましては、先月、天然能登寒ぶり及び能登押水花木を「百万石の極み」に追加認定したほか、大阪市内で復興フェアを開催し、能登をはじめ県内の約二十事業者の農林水産物等のトップセールスを行ったところであります。
新たな「いしかわの食と農業・農村ビジョン」の策定につきましては、先月までに県内五地区でワーキンググループを開催し、地区ごとの現状や課題などについて、農業者やJA、市町からご意見を頂いたところであり、鋭意、策定作業を進めてまいります。
北陸新幹線の敦賀・大阪間につきましては、先月八日に開催された北陸新幹線建設促進石川県民会議において、京都府等が示した課題の解決に年内にも目途をつけていただきたい旨を盛り込んだ決議がなされたところであります。政府・関係国会議員においては、これ以上、認可着工が先送りとならないよう、京都府等が示した課題や着工五条件の早期解決に向けて、データに基づき、精力的に検討を行っていただきたいと考えております。
北陸新幹線の整備効果を最大限発揮するためには、何よりも、一日も早い大阪までの乗換なしでの全線整備の実現が必要不可欠であり、今後とも関西圏を含む沿線地域との連携を密にし、県議会及び関係各位のご支援をいただきながら取り組んでまいります。
IRいしかわ鉄道につきましては、今年度の利用者数は、前年同期を上回り好調に推移しております。七月より、新たに小中学生等の運賃を割引する「子育て応援スマイルきっぷ」の販売を開始したところであり、さらなる利用促進に向け、沿線市町を含めた関係者一丸となって取り組んでまいります。
のと鉄道につきましては、先月の大雨の影響で法面が一部崩落し、能登中島・穴水間を運休しておりましたが、八月二十五日から運行を再開いたしました。運行再開した震災語り部観光列車についても、利用が好調であり、個人向け列車の運行期間を先月末から十一月末までに延長いたしました。また、来年度から三年間で全七両を新型車両に更新予定であり、先月実施した車両デザインの一般投票には、約五千六百件の投票をいただいており、来月に新たなデザインを決定することとしております。
小松空港につきましては、コロナ禍を契機としたビジネス需要の縮小や物価高騰に伴うコスト増加など、航空業界が全国的に厳しい状況にある中、小松・羽田便は、新幹線との競合により航空会社の収支の悪化が続いていることから、冬ダイヤ以降、全日空が一日四往復から二往復に減便され、一日八往復の運航となります。
私自身、全日空本社を二度訪問し、羽田便維持を強く要望したところであり、最終的に減便との判断がなされたことは大変残念であります。一方、好調が続いている福岡便が一日四往復から五往復へと増便され、札幌便増便についても、今後、前向きに検討するとの回答が全日空社長からあり、小松空港の利便性向上は一定程度図られるものと受け止めております。
羽田便は、首都圏との往来のみならず、乗継利用を通じて本県と全国、さらには世界を結ぶ極めて重要な路線であることから、福井県とも連携し、新たに、旅行会社への首都圏等からの個人旅行商品の造成支援や、利用実績に応じた特典付与によるリピーター確保策の強化などにより、小松空港の航空ネットワークの維持・向上に向けた取組を強化してまいります。
ターミナルビルの機能強化等に向けた基本構想の策定については、先月、県、小松市、北陸エアターミナルビル㈱、航空会社等で構成する検討会議を立ち上げたところであり、年度内の取りまとめに向け、施設規模や機能等の具体的な内容や民間活力を導入した空港の運営手法について、鋭意、検討を進めてまいります。
国が来年度中の創設を目指す防災庁につきましては、七月に、石破総理に対し、小松空港周辺への分局設置に向けた要望を直接行ったところであります。小松空港周辺は、首都圏有事の際にバックアップ機能を果たせることに加え、自衛隊との連携による支援体制が構築できる等の強みを有しており、今後とも、こうした優位性を国に対して積極的にアピールし、防災庁分局の誘致に向けて次の総理にも直接、強く働きかけてまいります。
のと里山空港につきましては、首都圏からのさらなる利用促進に向け、旅行会社に対し、能登の冬の食をテーマとするツアーの造成を支援し、「今行ける能登」への誘客につなげるとともに、開港以来の搭乗者数が、年内にも三百万人を超える見込みであり、記念イベントを開催いたします。
海外誘客につきましては、本年上半期の兼六園外国人入園者数が二十九万八千人と過去最高を更新するなど、円安を背景に外国人旅行者が増加しております。来月には、シンガポールにおいて、初めて北陸三県連携による現地旅行会社と北陸の観光事業者との商談会を開催するなど、さらなる誘客拡大につなげてまいります。
オーバーツーリズムの対策については、先月から金沢市と連携し、文化の違いによるトラブル防止のため、SNS広告によるマナー啓発を開始したほか、人流データを活用した観光地の混雑状況の見える化を通じて、観光客が集中する場所や時間帯の分散を促すことで、県民生活と観光客受入れの両立を図ってまいります。
金沢港につきましては、本年のクルーズ船の寄港数は、過去最多に並ぶ五十五本が見込まれており、新たに、国の支援を受け、今月から北陸鉄道浅野川線を活用し金沢港へのシャトルバスの混雑緩和を図るとともに、金石・大野地区を周遊するシャトルバスの運行や電動モビリティの導入により、金沢港周辺の賑わい創出を図る実証事業を開始いたします。
広域道路ネットワークの整備につきましては、のと里山海道の柳田インターチェンジ以北の二キロメートルを十二月初旬に完成させ、これまでの供用区間と合わせて八キロメートルを四車線で供用するほか、のと里山海道の上棚矢駄インターチェンジから徳田大津ジャンクション間の四車線化及び加賀海浜産業道路の白山市松本町から川北町橘間のバイパス整備について、来年春に工事着手いたします。
また、国道四一五号の石川・富山県境部の羽咋市菅池町から氷見市論田間については、国の権限代行により今年度から事業着手され、現在、地すべり調査が進められております。
金沢城二の丸御殿につきましては、今年度末の御殿本体の躯体工事着手に向けて、素屋根の建設を進めており、現在、その骨組みが現れたところであります。また、先月より、復元の機運醸成を図るため、工事現場の仮囲いを活用し、御殿や障壁画の下絵など完成イメージの展示を開始したところであります。
被災した石垣については、復旧過程を紹介するため、七月からいもり堀園地に見学ルートを設けており、来月十八日と十九日には、復旧作業の体験イベントを開催いたします。
前田育徳会尊經閣文庫の本県への誘致につきましては、七月末に行われた産学官石川復興プロジェクト会議において、会議のメンバーがそれぞれの立場で機運を高めていくことが不可欠との方針が確認されました。県としても、これに呼応し、尊經閣文庫の価値や魅力を広く理解いただけるよう、新たに、トークイベントや県立美術館内の尊經閣文庫分館の所蔵品に関する講座などを開催し、機運醸成を図ってまいります。
県立武道館の屋内相撲場につきましては、近年、記録的な猛暑が続く中、熱中症対策が急務であることから、来年夏までに空調設備を整備するほか、卯辰山相撲場についても、来年五月の高校相撲金沢大会までに更衣室や救護室機能を備えた倉庫を整備いたします。
横綱大の里の出身地、相撲大国石川として、恥ずかしくない施設にしたいと考えております。
本県教育の総合的な指針である教育振興基本計画につきましては、次期計画の策定に向け、七月に第一回検討会議を開催いたしました。委員からは、創造的復興を担う人材の育成やAIを活用した個別最適な学び、教員の業務改善などのご意見を頂いたところであり、年度内の策定に向け、鋭意、検討を進めてまいります。
また、「奥能登県立高校魅力化検討ワーキング」を来月にも設置いたします。ワーキングには、地元市町や経済界、有識者などにも参画いただき、「小規模校における学びの質の保証」と「特色ある学校づくり」の二つの観点から、幅広く議論を行うこととしております。
小松特別支援学校につきましては、近年増加している知的障害のある児童生徒の教育環境の向上を図るため、寺井高等学校の敷地内に、新たな特別支援学校を整備することとし、六月に基本計画の策定に着手いたしました。障害のある生徒一人一人に応じた教育を行うほか、特別支援学校と高等学校との間で、インクルーシブ教育の展開を目指すこととしており、相談事業も強化したいと考えております。
男女共同参画プランの改定につきましては、先般、審議会を開催したところであり、県民意識調査や企業からのアンケート結果も踏まえ、より一層女性が活躍できるよう今後、改定作業を進めてまいります。
子どもの権利に関する条例につきましては、議会の常任委員会でのご意見を踏まえ、今議会での提案を見送り、十二月議会での提案を目指してまいります。条例の必要性や意義について、議会や県民のご理解をいただけるよう、様々な方法で、これまで以上に普及啓発に取り組んでまいります。
プレミアム・パスポート事業につきましては、第一子世帯を含めた全ての子育て家庭にサービスを拡大することとしており、対象世帯は、これまでの約二倍となる約九万一千世帯となります。十一月十六日からのサービス提供開始に向け、来月一日からサービスの利用申請の受付を開始いたします。
奥能登における医療提供体制の確保につきましては、先月、第三回目の公立四病院機能強化検討会を開催いたしました。新病院開設には早くとも七年程度かかることをお示しし、新病院とサテライト医療機関の機能分担や運営主体などについて協議いたしました。十一月には第四回目の検討会を開催し、年明けには、奥能登地域の医療提供体制強化の方向性をお示しできるよう、鋭意、検討を進めてまいります。
消防力の維持・強化につきましては、市町の消防職員や消防団員の確保が喫緊の課題となっております。今回新たに、県が主導して、有識者を交えた検討会を立ち上げ、消防本部間の業務の共同化や広域化、消防団員の負担軽減など、具体の方策の検討を進めることといたしました。
救急医療体制の確保につきましては、近年、救急出動が急増する中、軽症者の搬送や不搬送の事案も多く、消防や医療現場の負担が大きくなっていることから、迅速な救急搬送と医療の質の確保を図るため、急な病気やケガの際の救急相談を受ける専用ダイヤルを県が開設することとし、来年二月の運用開始に向け、準備を進めてまいります。
ツキノワグマ出没への対応につきましては、今年の秋はブナの大凶作が予測され、人里での大量出没が懸念されています。クマと遭遇した際に身を守る行動等を記したチラシを全戸配布し、県民の皆様へ一層の注意喚起を図ってまいります。
また、鳥獣保護管理法の改正により、クマが市街地等に侵入した場合、今月から市町村長の判断で銃による捕獲が可能となったことから、実地訓練の実施や捕獲隊員への猟銃射撃研修の拡充など、市町などと連携し、人身被害防止に取り組んでまいります。
カーボンニュートラルの推進につきましては、県環境総合計画の改定に向け、先般、審議会を開催したところであり、今後、各部会での議論を重ね、検討を進めてまいります。
以上が、今回の補正予算の大要であり、一般会計補正総額は二百三十五億五百万円余、このうち先月の大雨災害への対応に係る予算は百十九億五千五百万円余、地震及び豪雨に係る予算は六十八億四千二百万円余となっております。財源については、国庫支出金九十八億二千百万円余、県債九十三億六千二百万円などを充てるほか、能登復興応援基金十一億二千四百万円余、復興基金三億八千万円、財政調整基金十六億円を取り崩すこととし、補正後累計は八千七百七十七億八千五百万円余となるものであります。
また、公営競馬特別会計において、大雨の災害復旧のほか、来年十一月開催予定のJBC競走に向けた券売機のキャッシュレス対応など、三億四千八百万円を補正しております。 次に、提案いたしましたその他の諸議案のうち、主なものについてご説明申し上げます。
議案第四号は、石川県成長戦略の実現や、地震及び豪雨からの復旧・復興に向けた施策の財源を確保するため、来年一月末までの法人県民税法人税割の税率の特例について、適用期間を五年間延長するほか、金沢駅から片町に至る都心軸沿線地域が、七月に都市再生特別措置法の緊急整備地域に指定されたことに伴い、不動産取得税の軽減措置を定めるものであります。
報告第十七号から第五十七号は、いずれも地方自治法の規定により、石川県公立大学法人や県民ふれあい公社など四十一法人の経営状況をご報告するものであります。
志賀原子力発電所につきましては、現在、原子力規制委員会の法律に基づく新規制基準への適合性に関する審査会合において、敷地周辺断層の活動性等に関する審査が行われております。規制委員会には、今般の地震による影響を検証するとともに、科学的な根拠に基づき厳格な審査を行い、地元住民はもとより国民の理解と納得が得られるよう、しっかりと説明責任を果たすことを、引き続き、強く要望してまいります。
原子力発電所は安全確保が大前提であり、北陸電力㈱には、今後とも、より一層の安全対策に取り組むよう強く求めてまいりたいと考えております。
先月の大雨への対応で、県政の要諦は、県民の命や財産を守る危機管理にあることを、改めて肝に銘じているところであります。被災者の皆様に常に寄り添い、国、市町と緊密に連携しながら、一日も早い復旧、創造的復興に取り組んでまいります。同時に、県政の羅針盤である石川県成長戦略の具現化に向けた取組を進めてまいります。引き続き、県議会はもとより、県内市町の首長のご意見、県民各界各層の声に真摯に耳を傾け、県庁職員一致団結して、県政の執行に全力を傾注してまいる所存です。
以上をもちまして、私の説明を終わりますが、なにとぞ慎重ご審議のうえ、適切なるご決議あらんことをお願いいたします。