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更新日:2023年4月20日

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「石川県白山自然保護センター研究報告」(第49集)要約

論説

「白山亜高山帯の泥炭から抽出したきのこ胞子化石」

河原  栄・糟谷大河・栂  典雅・後藤理子

白山高山帯から亜高山帯の最終氷期以降の菌相を知る目的で,白山亜高山帯の泥炭から胞子化石の抽出を試みた。植物の花粉化石の抽出のために一般に用いられている硫酸と氷酢酸を混合したアセトリーシス液,水酸化カリウム処理をするとベニタケ属とイッポンシメジ属の胞子は容易に変形し,塩酸は形態変化や染色性の低下を起こさないことが分かったため,酸・アルカリとしては塩酸のみを用い,重い比重の塩化亜鉛溶液で胞子や花粉と無機粒状物を分離し,74 µmの篩で大型の夾雑物を除去して,胞子の抽出を行った。ベニタケ属あるいはチチタケ属の胞子と褐色類球形の表面平滑な胞子がごく少数認められた。現在の所,菌相を明らかにできる胞子の数ではなかったが,泥炭中から酸・アルカリ易崩壊性胞子化石を検出した世界初の報告であり,今後の胞子化石の研究の端緒となる結果と考えられた。

「白山亜高山帯の泥炭から抽出したきのこ胞子化石」(PDF:1,074KB)

「中宮展示館におけるニホンザル(Macaca fuscata fuscata)の出現記録(2013—2022年)」

平松新一・安田雅美・南出  洋

2013年から2022年までの中宮展示館周辺でのニホンザルの出現記録を整理し,その出現傾向について検討した。

2013年から2022年までの中宮展示館の開館日数1,667日のうちニホンザルが出現したのは360日だった。出現日数は年ごとに増減があり,2014年が58日と最も多く,2015年は14日と最も少なかった。ニホンザルが多く出現していた年は中宮展示館周辺のブナおよびミズナラは凶作または大凶作だった。この地域のニホンザルはこれらの実を利用しており,周辺にこれらがないときは中宮展示館に移動し,付近のクルミなどを利用すると推察できる。

ニホンザルの出現は5月にやや多いが,6月から7月にかけて少なく,その後増加し10月はほとんどの年で多かった。白山ろくにすむニホンザルは季節移動することが知られており,6月から7月に出現が少ないのは,群れが夏に高所へ移動しているためと考えられる。

「中宮展示館におけるニホンザル(Macaca fuscata fuscata)の出現記録(2013—2022年)」(PDF:450KB)

「2022年に市ノ瀬ビジターセンターの木製外壁に集まった狩人蜂類とその寄生蜂類の記録」

中田勝之

2022年初夏,筆者は市ノ瀬ビジターセンター木製外壁の孔(以下,「センターの孔」とする。)にハチ目昆虫の狩人蜂類とその寄生蜂類が集まることに気付いた。その後,これらの種類相と季節変動の把握を目的として7~10月に捕虫網を用いた掬い採りで10科30種169個体(シリアゲコバチ科1種,アナバチ科2種,ギングチバチ科4種,クモバチ科3種,コツチバチ科1種,スズメバチ科10種,セイボウ科2種,ムカシハナバチ科1種,コハナバチ科1種,ハキリバチ科5種)を採集した。その結果,季節が進むにつれて種数,個体数ともに減少する傾向がみられた。また,本調査と1990年代の旧白峰村の出作り小屋での結果の比較により,狩人蜂類のドロバチ類等の大型種がセンターの孔を,イスカバチ類等の小型種が出作り小屋を好む可能性が推察された。そのほか,ギングチバチ科で出作り小屋でのみ確認された種数がセンターの孔でのみ採集された種数よりも多くなることが確認された。

「2022年に市ノ瀬ビジターセンターの木製外壁に集まった狩人蜂類とその寄生蜂類の記録」(PDF:917KB)

「白山公園線(石川県)におけるセイタカアワダチソウ(Solidago altissima)の分布及び除去の効果」

北原岳明・八神徳彦・平松新一・野上達也・宮腰政男・西田睦男・池内  裕

主要地方道白山公園線(風嵐ゲート~別当出合までの約16.0km)及び市ノ瀬園地においてセイタカアワダチソウの分布調査と除去作業を行い,2018年から2022年までの結果をまとめるとともに,2012年からの結果と絡めて除去の効果を考察した。その結果,白山公園線の風嵐から市ノ瀬までの区間については,風嵐ゲートより0~2km及び6~8kmの区間に集中して生育している傾向が見られ,これらの区間では確認地点数はやや減少傾向,湿重量は減少傾向となった。市ノ瀬園地については,2020年から2年連続で多量の生育が確認されたことにより,2018年以降著しく増加した。白山公園線の市ノ瀬から別当出合までの区間については,2019年から1地点で生育が確認されているが,毎年の除去により茎数及び湿重量が年々減少している。除去により生育は抑えられているが,新たに生育が確認される場所もあるため,今後も新たな生息地の確認に注視しながら除去活動を継続していきたい。

「白山公園線(石川県)におけるセイタカアワダチソウ(Solidago altissima)の分布及び除去の効果」(PDF:1,306KB)

「石川県のブナ科樹木3種の結実予測とツキノワグマの出没状況,2022」

近藤  崇・野上達也・伊丹えつ子

ツキノワグマ出没予測のため,主要な餌となるブナ,ミズナラ,コナラの雄花序落下量と着果度を観測することにより結実予測を行った。調査はクマの多い加賀地方を中心に,各樹種20~30地点程度で行った。その結果,5月~6月に実施した雄花序落下量調査では,県内全体としてブナは凶作,ミズナラは大豊作,コナラは並作と予測された。また,8月に実施した着果度調査では,県内全体としてブナは凶作,ミズナラは豊作,コナラは並作と予測された。ブナの作柄が悪かった一方で,ミズナラ,コナラの作柄が一定程度良かったことから,秋期のツキノワグマの出没が少なかったと考えられた。クマの目撃件数は244件と大量出没のあった2020年の869件に比べ大きく減少した一方,春期から夏期に安定して目撃されていることから注意が必要である。

「石川県のブナ科樹木3種の結実予測とツキノワグマの出没状況,2022」(PDF:914KB)

「登山道における能登ヒバ材工作物のクマ被害について(中間報告2)」

宮崎顕治

ツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus;以下,クマ)によって,登山道などの山地に設置する標柱・案内板などが齧られ,管理上の問題となることがある。そこで,医王山エリア及び白山周辺エリアでの木製工作物のクマ被害状況について,宮崎(2021,2022)で報告したところである。これらの報告で被害はスギ材などを利用した塗装材のみならず,耐久性の高さから近年利用の増えてきた無垢の能登ヒバ材(以下,ヒバ材)であっても齧られるなどの被害を受けていることを被害状況調査として紹介した。特に2021年は工作物のクマ被害の多い年となり,被害の再現性が多数確認でき,既設工作物で一度被害を受けたものが2回以上齧られる繰返し被害(以下,繰返し被害)も多く発生したことを報告した。

2022年は,上記エリアでの追加調査及び石川県内の他のエリアで被害状況調査を実施した。また,2020年から実施しているヒバ材被害の再現性を確認するための調査も継続したので併せて報告する

「登山道における能登ヒバ材工作物のクマ被害について(中間報告2)」(PDF:2,153KB)

「白山麓におけるニホンジカのライトセンサスの試み(第3報)」

川畠敦仁・北原岳明・近藤  崇・宮崎顕治・村中克弘・有本紀子

白山麓のニホンジカ生息状況を把握するためライトセンサス調査を行った。調査は11月中旬から下旬に,2022年は自然災害で通行止めとなった地点が出たため,従来のルートとは標高の異なるルート,また,シカの糞塊調査から密度が比較的高いと推測されたルートを新規に2つ追加し,標高40-1,070m,1ルートにつき6-17 kmで調査を行った。2018年から2019年のライトセンサスにおいて,瀬波では二ホンジカは確認することができなかったが,2020年は1頭,2022年は5頭とわずかではあるが目撃されるようになった。2022年は,瀬波,原沢,五十谷の3つのルートでニホンジカを計9頭確認した。 

「白山麓におけるニホンジカのライトセンサスの試み(第3報)」(PDF:792KB)

「2022年に市ノ瀬で採集されたハチ類の記録」

中田勝之

白山市市ノ瀬では,かつてハチ目昆虫の研究が盛んに行われてきた。しかし,近年調査結果の報告が少ないため,筆者は市ノ瀬におけるハチ目の生息現況を明らかにすることを目的として市ノ瀬ビジターセンター周辺及び市ノ瀬園地で2022年に採集調査を行った。採集は捕虫網を用いた掬い採りのほか拾い採り及び見つけ採りで任意の日程の9~17時に1回15~60分程度の調査時間において実施した。

本調査で,同定の終わった8科25種のハチ目昆虫(ヒラタハバチ科1種,ハバチ科9種,キバチ科1種,カギバラバチ科1種,スズメバチ科6種,アリ科3種,ハキリバチ科1種,ミツバチ科3種)を報告した。そのうちハバチ科は,採集されるものの同定困難な種が多く,引き続き調査を行う必要性を感じている。

なお,同年に調査された市ノ瀬ビジターセンターの木製外壁に集まった狩人蜂類とその寄生蜂類として記録された10科30種については,本第49集の中で別に報告している。

「2022年に市ノ瀬で採集されたハチ類の記録」(PDF:206KB)

「2022年に見つけ採りによる白山室堂平及び弥陀ヶ原の土壌性昆虫相の把握」

中田勝之

一般的にピットフォールトラップ(以下「PFTとする。」)で確認が難しい土壌性昆虫類の把握のため,筆者は2022年に室堂平及び弥陀ヶ原において優先する植物の異なる7地点で表層からの見つけ採りによる調査を実施し,2目6科20種136個体の昆虫類を採集した。種数,個体数ともに最も多かったのは,ハネカクシ科で次にオサムシ科,ゾウムシ科と続き,タマキノコムシ科,マルトゲムシ科,ミズギワカメムシ科は1個体のみ採集された。オサムシ科のうちPFTで優先的なオンタケヒメヒラタゴミムシ等が見つけ採りではごく少数の採集結果であることやオンタケチビゴミムシは見つけ採りで多数採集されたが,PFTでは僅かな個体が確認されただけであることが分かった。

これらから,従来のPFTだけでは白山の地表性昆虫類の一部しか記録できていなかったことが示唆され,今後,白山山岳域の地表性昆虫相を明らかにするためには,幅広い採集方法による調査の必要性が考えられた。

「2022年に見つけ採りによる白山室堂平及び弥陀ヶ原の土壌性昆虫相の把握」(PDF:1,343KB)

「白山麓における食糞性コガネムシ類の記録」

八神徳彦

2004年から2022年に,白山麓(主に白山市)で採集,観察された食糞性コガネムシ(フン虫)の記録を集計して,糞の種類等別,標高別,月別の個体数から大まかな生息状況をみた。記録したフン虫は,主に動物の糞から見出したもので,灯火やライトトラップに飛来したものなども含んでいる。記録されたフン虫は5科9属23種だった。早春の低地の集落周辺では,イヌ糞にセマダラマグソコガネが見られた。ニホンザルの早春の糞にはヌバタママグソコガネなどが多く見られた。また,春から夏のイヌ糞には,クロマルエンマコガネなどが多く見られた。初夏から夏には,ケブカマグソコガネが水分の多い糞や灯火に多数が見られた。ヒメコブスジコガネなどは肉食獣の糞中の毛や骨片に見られた。センチコガネは長い期間,いろいろな糞で見られた。このように,白山麓では多くのフン虫が時期や標高,訪れる糞などを異にして生息していることがわかった。

「白山麓における食糞性コガネムシ類の記録」(PDF:177KB)

「白山自然保護調査研究会」令和3年度委託研究成果要約

「白山自然保護調査研究会」令和3年度委託研究成果要約(PDF:221KB)

 

お問い合わせ

所属課:生活環境部白山自然保護センター 

石川県白山市木滑ヌ4

電話番号:076-255-5321

ファクス番号:076-255-5323

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