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更新日:2021年3月15日

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「石川県白山自然保護センター研究報告」(第44集)要約

論説

「白山火山における1.9~2.4calkBPのマグマ噴火―岐阜県大倉山周辺にみられるテフラ層からの知見―」

酒寄淳史・奥野 充・田島靖久・守屋以智雄

白山東方の大倉山周辺に分布する3層の降下テフラ(下位より、南竜火山灰、Hm-11、および大倉山降下スコリア(新称))について、噴出年代と岩石の調査研究を行った。南竜火山灰の噴出年代は約2400 cal BPであり、その本質物質であるスコリアは、同じ噴火の産物と考えられてきた白水滝溶岩より苦鉄質な性質を示す。これらのことから、南竜火山灰は、白水滝溶岩(約2200 cal BP)に先立つ噴火によってもたらされたと考えられる。Hm-11は、安山岩質の火山礫や火山灰からなる降下テフラである。噴出物の特徴とその岩石学的性質は、御前峰上部溶岩あるいは剣ヶ峰溶岩の活動に伴う爆発的噴火によってHm-11が形成されたことを示唆する。大倉山降下スコリアは、約1900 cal BPの噴出年代を示す。斜長石斑晶に極めて乏しく、かんらん石斑晶に富むなど、白山火山噴出物の中では特異な岩石学的性質を有する噴出物である。

「白山火山における1.9~2.4cal kBPのマグマ噴火(岐阜県大倉山周辺にみられるテフラ層からの知見)」(PDF:1,195KB)

「歴史史料から見た白山千蛇ヶ池雪渓」

小川弘司

千蛇ヶ池雪渓は白山の山稜西側の標高2、570m付近に位置する多年性雪渓である。白山山頂部に唯一存在する多年性雪渓であり、その動態が過去から現在までどのように変化しているかは地球温暖化等気候変動を知る上でも重要である。白山は信仰の山として古くから登山が行われ、その記録が残っており、本稿では過去の歴史史料から千蛇ヶ池雪渓がどのようにとらえられていたかを調べた。
収集された史料は、江戸期後期・明治期を中心に38点に及び、白山山頂部の様子を紹介する際に必ずと言ってよいほど本雪渓についての記録が認められた。その記録を見ると、「池ノ雪ハ神代ヨリ〆消ルフナク数千歳ヲ経ルカ故ニ千歳ヶ池ト云(『白山全上記』(1830年)、著者注:池の雪は神代から消えることなく、数千歳を経るがために千歳ヶ池と云う)」と記されているように、古くから本雪渓が白山山頂部で、常に雪が堆積した特別な場所として認知されていたことがわかった。
「歴史史料から見た白山千蛇ヶ池雪渓」(PDF:659KB)

白山公園線(石川県)における2017年のセイタカアワダチソウ(Solidago altissima)の分布と除去

平松新一・八神徳彦・内藤恭子・野上達也・宮腰政男・西田睦男・池内  裕

白山公園線及び白山公園線から枝分かれする工事用道路、市ノ瀬園地においてセイタカアワダチソウの分布調査と除去作業を行った。その結果、分布地点は道路沿い35地点、工事用道路50地点、市ノ瀬園地2地点の計87地点で確認され、工事用道路で分布地点が減少していた。除去作業では78.54kgのセイタカアワダチソウを除去した。開花茎数は811本、非開花茎は4、762本で、着花率は年々減少傾向にあった。除去作業により白山公園線およびその周辺に生育しているセイタカアワダチソウ集団は小さくなっていることが明らかになった。

「白山公園線(石川県)における2017年のセイタカアワダチソウ(Solidago altissima)の分布と除去」(PDF:332KB)

「石川県内の野生ニホンザルの個体群動態について」

滝沢 均・伊沢紘生・志鷹敬三

2016年12月から2017年2月にかけ、犀川流域及び手取川上流域に生息する群れを中心にニホンザルの個体群動態を調査した。手取川水系では観察された12の群れはおおむね30頭から60頭台で安定した状態で推移していた。2016年は多くのアカンボウが生まれており、今後の個体数や群れの数の増加が推測される。総個体数は手取川水系の群れで785頭から825頭で、ハナレザル、オスグループを加えると1000頭前後になると推測された。白山地域には、特に冬期間に狭い地域に多くの群れが集中しており、今後群れが増加することにより土地利用の様子や群れ間関係も変わってくると推測され、今後さらに分布域が拡大していくと推測できる。犀川流域では12月に1群、1月に2群が観察されたが、これらの関係は不明である。犀川流域では群れの数が少なく手取川水系とは個体群の変動に違いが見られ、この要因を今後明らかにする必要がある。

「石川県内の野生ニホンザルの個体群動態について」(PDF:860KB)

石川県のブナ科樹木3種の結実予測とツキノワグマの出没状況,2017

八神徳彦・野上達也・伊丹えつ子・小谷二郎・野崎英吉

ツキノワグマ出没予測のため、主要な餌となるブナ、ミズナラ、コナラの雄花序落下量と着果度を観測することにより結実予測を行った。調査はクマの多い加賀地方を中心に、各樹種25か所程度で行った。その結果、5月~6月に実施した雄花序落下量調査では、県内全体としてブナは凶作、ミズナラは豊作、コナラは並作と予測された。また、8月に実施した着果度調査では、県全体としてブナは並作、ミズナラは豊作、コナラは並作と予測された。餌となるブナ、ミズナラ、コナラの実が比較的多いため、今年度は秋期に平野部へのクマの大量出没の可能性は低いと予測された。実際、秋期以降のクマの平野部への出没は少なかったが、5月~7月の出没は多かった。今後、春~夏に出没するクマの対策も必要となってくる。

「石川県のブナ科樹木3種の結実予測とツキノワグマの出没状況,2017」(PDF:873KB)


「自動撮影カメラによるニホンカモシカの生息状況の把握」

近藤 崇・小谷直樹・内藤恭子・野崎亮次

石川県ではニホンカモシカは1955年頃には奥山の一部にしか生息していなかったが、徐々に分布を拡大し、2000年までに加賀地域の低標高地や能登地域の七尾市で確認されるようになった。本研究ではその後17年経過した現在のカモシカの生息状況を、哺乳類調査用に設置された自動撮影カメラの結果を利用して検証することを目的とした。8月1日から10月31日を対象として、80台の自動撮影カメラでカモシカが400回確認された。2000年までに分布が拡大した地域に、現在もカモシカが生息していることが確認できたと同時に、能登地域では撮影頻度や撮影地点割合が低く、また、当年子も確認されず、加賀地域と比較して生息密度がやや低いことが示唆された。カモシカの撮影された時間は特定の時刻に偏ることはなかった。カメラごとに、ニホンジカやイノシシとカモシカの撮影頻度を比較した結果、負の相関はみられず、現状では両者によるカモシカへの負の影響は確認されなかった。 

「自動撮影カメラによるニホンカモシカの生息状況の把握」(PDF:468KB)


「ブナオ山観察舎における大中型哺乳類の観察記録」

小谷直樹・谷野一道・南出 洋・甲部芳彦

ブナオ山観察舎において、観察舎職員が1981年より大中型哺乳類の観察を行っている。観察日数の上位5種はカモシカ、ニホンザル、イノシシ、クマ、キツネであった。カモシカの日あたり観察頭数は1995-96年をピークに減少傾向がみられ、低標高地への流出が影響したと考えられる。ニホンザルの日あたり観察頭数は横ばいであり、タイコB2-1群、2-2群及びカムリE群が出現していることが考えられる。イノシシの日あたり観察頭数は2007-08年から2014-15年まで増加傾向がみられている。イノシシは白山麓において2002年に捕獲されるようになったことから、低密度に分布していた段階から観察対象地域周辺を利用し始めたことが考えられる。ツキノワグマは2006-07年より日あたり観察頭数が著しく増加傾向にあり、ブナオ山地域一帯が2000年に鳥獣保護区に指定されたことが影響したものと考えられる。キツネの日あたり観察頭数は0.1頭/日未満で推移しており、生息密度は著しく小さいことが考えられる。

「ブナオ山観察舎における大中型哺乳類の観察記録」(PDF:295KB)


「中宮展示館における動物の記録」

平松新一・南出 洋・安田雅美

  中宮展示館周辺で2015年以降に観察した動物のうち、石川県で観察例の少ない種類の記録について報告した。爬虫類ではシロマダラがいしかわレッドデータブック<動物編>2009(以後いしかわRDBと表記)で準絶滅危惧種として記載されているが、中宮展示館周辺では何度か確認されている。両生類ではナガレタゴガエルがいしかわRDBでは準絶滅危惧種にランク付けされているが、2017年に中宮展示館前の蛇谷川で確認された。昆虫類ではヒメシジミがいしかわRDBで絶滅危惧2類の種であるが、近年白山麓での確認が多く、中宮展示館でも館前の緑地で記録されている。このように、中宮展示館周辺は貴重な種をはじめとして多様な生物の生息地となっている。

「中宮展示館における動物の記録」(PDF:159KB)


「白山自然保護調査研究会」平成28年度委託研究事業要約

白山自然保護センターが白山自然保護調査研究会に委託している研究事業の平成28年度分成果要約。

「白山自然保護調査研究会」平成28年度委託研究事業要約(PDF:184KB)

お問い合わせ

所属課:生活環境部白山自然保護センター 

石川県白山市木滑ヌ4

電話番号:076-255-5321

ファクス番号:076-255-5323

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