御殿空間の総合研究（4年度）

江戸時代前期以降、二ノ丸は金沢城の中枢を占めることとなり、御殿の建物群（領国支配の要としての「政庁」と藩主一族の「邸宅」の機能を併せ持つ施設）とともに、周辺施設（庭園・馬場、門・土蔵等）が配置され、それらが一体となって「御殿空間」を形成していた。
本事業は、表向・御居間廻り・奥向からなる建物群と、その周辺の庭や馬場等を含む「御殿空間」の全体を対象として、その使われ方や特徴を明らかにするため、総合的な研究に取り組むものである。
令和4年度は、「二之御丸御殿御造営内装等覚及び見本・絵形」（「内装等覚」）史料集の刊行、資料調査、二ノ丸御居間先確認調査等を実施した。なお、調査にあたっては、金沢城調査研究委員会・御殿空間専門委員会・伝統技術（石垣）専門委員会委員の現地指導を受けた。

• 史料集の刊行

『二之御丸御殿御造営内装等覚及び見本・絵形』 A4 変形（225mm×297mm）

刊行：令和5年3月31日   頁数：第一分冊（翻刻編）118頁、第二分冊（影印編）252頁

江戸後期の二ノ丸御殿の内外装を記録した「二之御丸御殿御造営内装等覚及び見本・絵形」（「内装等覚」、文化8年（1811）作成）は、御殿内部の意匠・機能等を解明する上できわめて重要な史料である。令和4年度は、本史料について、彩色豊かな見本・絵形を高精細に再現し、解説を付し印刷物として刊行した。

• 「内装等覚」等の資料調査

次年度に計画している、形態・材質を対象とした書誌学的調査に係り、紙質や色料、製本などの調査項目・方法について検討するため、事前調査を行った。唐紙見本については、下地が二層となるものもみられ、確認できる地・模様の色料を対象に、蛍光X線分析等を行うこととした。

• 二ノ丸御殿の儀礼史料調査、絵図調査

二ノ丸御殿の儀礼史料の内容確認・解読を進めるとともに、二ノ丸絵図の変遷と背景について詳細に検討した（研究紀要第21号に研究成果の前編を掲載）。

• 現地指導

令和4年8月9日（火曜日）、同5年3月14日（火曜日）

「内装等覚」・二ノ丸絵図等の資料調査（金沢城調査研究御殿空間専門委員会）

令和4年6月8日（水曜日）「内装等覚」の資料調査

（小粥祐子 金沢城調査研究御殿空間専門委員会委員）令和4年9月27日（火曜日）「内装等覚」の資料調査

（梶青華 一般財団法人石川県文化財保存修復協会代表理事）

御殿を取り巻く庭園等の調査研究として、藩主邸宅に相当する御居間先の庭園（池・辰巳用水等）や馬場等の埋蔵文化財確認調査を行う。本年度は、御居間先の池の実態を確認するため、絵図と照合した位置で発掘調査を実施した。

調査期間：令和4年7月1日（金曜日）～12月12日（月曜日） 調査面積：30平方メートル

現地指導：令和4年10月24日（月曜日）・27日（木曜日）（金沢城調査研究委員会委員、金沢城調査研究御殿空間専門委員会委員・伝統技術（石垣）専門委員会委員）

• 調査区の南側で、白色粘土を貼った池の一部を確認した。

• 調査区西端で、下層遺構として落ち込みを検出した。