―上海駐在員便り 2022年3月―

春節の動向及び北京冬季五輪開幕

■春節の動向

中国では、1月31日から2月6日まで春節休暇でした。昨年の春節は防疫対策により省を跨ぐ移動規制が強く、現地に留まる中国人が多かったですが、今年は一定の自粛ムードはあったものの、出稼ぎ労働者の帰省などは多かったように思われます。交通運輸省によると、春節期間中の延べ旅客数は、コロナ前の2019年同期比では69.2％と少ないものの、前年同期比では31.7％増の1億3000万人との推計が出ております。

また、上海市文化観光局によると、春節連休期間に上海市を訪れた旅行者は延べ1000万人を超え、観光収入は全国トップの177億2,100万元（約3,200億円）となりました。実際に上海の様子を見ると、オフィス街や居住地域は普段より閑散としており、逆に代表的な観光スポットである豫園や外灘などは多くの人で賑わっておりました。特に豫園は場所によっては身動きができないほど混雑しており、コロナ禍とは思えない状況でした。

■北京冬季五輪開幕

2月4日には北京冬季五輪が開幕しました。2008年に開催された夏季大会も記憶に新しいと思いますが、北京は夏冬両方の五輪が開催された初めての都市となりました。今回は91カ国・地域が参加し、冬季史上最多の109種目が実施され、日本選手団124人が参加しております。

現在、春節明け直後において、まだまだメダル争いは始まったばかりですが、ここまでのところ周囲の中国人の様子等を見ても、盛り上がりは控えめに感じられます。中国人にとっての一大イベントである「春節をいかに過ごすか」や、現在も局所的に発生しているコロナに意識がいっていること、チケットの一般販売が見送られたこと等も影響しているものと思われます。

ただ、五輪に関連して人気が過熱しているものもあります。例えば、フィギュアスケートの羽生選手は中国でも大人気です。中国のネット上では、名前をもじった「柚子」の愛称で親しまれており、演技の際は大量の応援メッセージが投稿されるとともに、ここ数日は中国のSNS上でも羽生選手に対する好意的な投稿で溢れております。以前から中国でも人気があるということは聞いていたものの、想像以上の人気ぶりに驚かされます。もう一つは、公式マスコットキャラクターのパンダ「氷墩墩（ビンドゥンドゥン）」です。かわいいと人気が高まり、グッズは店頭でも売り切れ続出、オンラインショップでも品薄となっており、グッズの生産調整に大会組織委員会が対応に追われる事態となっております。

■ウィンタースポーツ市場の拡大

中国の大手OTAや旅行研究機関によると、北京冬季五輪の影響で春節期間中のスノー旅行の予約が前年比484％増加しており、今冬のスノー旅行者は3.5億人に達するとの予測も出ております。また、スノー関連を中心に、スポーツ用品購入や関連サービスへの支出も各地で増加している他、開催地である北京市では今年のウィンタースポーツ人口が1000万人に達するとの市政府見解も出ており、五輪効果が顕著に表れております。

これらの動向は、北京五輪が開催された今年だけに限ったものではなく、今後もウィンタースポーツ市場は拡大していくものと思われます。中国政府は2025年までに市場規模を1兆元に拡大させる計画を策定しており、現地メディアによると、2022年の市場規模は8000億元に達する見通しとなっております。実際、各地でスキー場やスケート場の建設が加速しており、室内を含めるとすでに全国で800カ所以上となっていることからも需要の増加がうかがえます。

■スノーツーリズムの可能性

コロナ後のインバウンドを考える際、石川県は雪国であり、スキー場含めスノー関連資源が豊富であるという点はアドバンテージであり、今後ますます欠かすことのできない要素になってくると思われます。前述の通り中国にはすでに多くのスキー場があるといっても、ケーブル式のリフトやゴンドラを備えるスキー場は一部に限られるとともに、人工雪がほとんどです。また、場所としても吉林省などの東北地域に集中しており、コロナ後の航空の運航状況によっては、日本の質の良いスキー場に行くことを選択することも大いに考えられます。また、スキー単体では北海道や長野県等のスキー場の規模や雪質には及ばないとしても、温泉や観光など他の要素もセットにして魅力を高められることも考慮すると、今後、需要が急拡大している中国からのスキー誘客の可能性はこれまで以上に高くなっていくものと考えられます。

（写真1：春節時の豫園）

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