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更新日:2015年4月15日

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「石川県白山自然保護センター研究報告」(第41集)要約

論説

「白山高山帯で新たに発見されたホコリヤグラタケ(Collybia cirrata)」

糟谷大河・保坂健太郎・栂典雅

2012年に白山の高山帯で採集したヤグラタケモドキ属のきのこを、形態的特徴及び分子系統解析の結果に基づき、ホコリヤグラタケ(Collybia cirrata)と同定した。本種は、これまでヨーロッパやシベリア、北アメリカなど北半球温帯以北で報告され、特に高山帯や極地など北極を中心とする周極地域に分布すると考えられている。日本では、北海道大雪山旭岳の記録のみであり、白山での記録は本州初となる。また、今回、日本産標本としては初めてとなる分子系統解析により、ロシア、ヨーロッパ、グリーンランド及びアメリカ合衆国産のホコリタケと同一のクレード(系統的にまとまった、共通の祖先から進化した一つの集団)を形成することがわかった。このことから、ホコリヤグラタケの胞子は、北極圏を中心とした地域から長距離を飛散するなど、広大な範囲で遺伝子流動が生じていると推察された。

「白山高山帯で新たに発見されたホコリヤグラタケ(Collybia cirrata)」(PDF:974KB)  

 

「中宮展示館周辺で見られたチョウ類」

平松新一・南出洋・安田雅美

中宮展示館観察路および正面の園地で、2014年4月26日から11月16日までの205日間、チョウ類の観察をおこなった。その結果、5科54種が記録され、これは石川県全体で確認された種数の43.2%にあたる。観察の結果、タテハチョウ科が24種と最も多く、全体の44.4%を占め、シジミチョウ科の13種、セセリチョウ科の7種がこれに続いた。観察した種のうち目撃日数が最多だったのは、モンシロチョウの92日で、これは観察日数の44.9%にあたった。次に多かったのはミドリヒョウモンの64日で、スジグロシロチョウ(61日)、キタキチョウ(55日)、サカハチチョウ(50日)がこれに続いた。観察された時期については、キタキチョウ、スジグロシロチョウ、モンシロチョウなど5月中旬から10月下旬までの長期間記録された種がいた一方で、ウスバシロチョウ、ツマキチョウ、ヒメシジミのように一時期だけに記録された種もいた。

「中宮展示館周辺で見られたチョウ類」(PDF:1,310KB)  

 

「白山におけるシデムシ類の出現高度」

平松新一

2014年7月から10月にかけて、白山の海抜830mから2,600mの範囲で、ピットフォールトラップ法を用いてシデムシ類を採集した。本調査で、2属5種のシデムシ科コウチュウ類が採集された。ヨツボシモンシデムシは850mから1,550mの山地帯の範囲だけで採集され、出現高度が最も低かった。ヒメモンシデムシは1,050mから2,300mまで出現していた。ヒロオビモンシデムシは標高2,200m以上の地点で採集され、高山帯にでも多数採集された。ツノグロモンシデムシは1,550mから2,600mの範囲で採集された。ビロウドヒラタシデムシは1,850mから2,400mの範囲で記録された。

「白山におけるシデムシ類の出現高度」(PDF:994KB)  

 

「白山念仏池(仮称)のタマミクリ及び水生生物を中心とする生物相」

栂典雅・平松新一・江崎功二郎

近年、存在が知られるようになった白山北縦走路の念仏池(仮称)の生物相を調査した結果、『石川県の絶滅のおそれのある野生生物(いしかわレッドデータブック)』に絶滅危惧II類として記載されているタマミクリ(ミクリ科ミクリ属)の群生を確認した。群落の規模は、長径約50m、短径約20mの池の約7割を占めるとみられ、白山における既知の群落としては最大規模である。また、昆虫類ではトンボ目3種、カメムシ目1種、コウチュウ目11種、トビケラ目1種の計16種、両生類は2種を確認した。このうち、カメムシ目のエゾコセアカアメンボは、2014年に環境省の調査により楽々新道の小桜平でも確認されているが、これまでは観光新道の殿ヶ池での記録のみで、県レッドデータブックでは「情報不足」とされている。本種は、富山県では山地上部から高山にかけて確認されていることから、北陸地方の山岳高所を分布域としていると推測される。

「白山念仏池(仮称)のタマミクリ及び水生生物を中心とする生物相」(PDF:1,140KB)  

 

「里山林に設置したセンサーカメラによるツキノワグマ撮影数の時間分布」

有本勲・野崎亮次・江崎功二郎

金沢市東部の集落が分布する里山地域に、2012~2014年の5~12月まで18台の自動撮影カメラを設置し、ツキノワグマを撮影した。その結果、クマが通年的に撮影され、撮影回数は5月から8月にかけて緩やかに増加し、その後ピークを示した。クマの撮影時間は、各年共通して0-7時および17-23時台の割合が高く、クマはヒトの活動時間帯を避けて行動していた。2014年の撮影回数は2012年及び2013年と比較すると、年間を通して目撃数が2倍に増加し、撮影数は3倍以上も増加したことから、調査地域に分布する地域個体群サイズの増大が示唆された。

「里山林に設置したセンサーカメラによるツキノワグマ撮影数の時間分布」(PDF:1,076KB) 

 

能登半島に自生するクルマユリ(Lilium medeoloides)の現状と白山のクルマユリとの形態比較

野上達也・伊藤浩二・大谷基泰・吉本敦子

能登半島の外浦区に隔離分布する、いわゆるサドクルマユリは、石川県RDB絶滅危惧I類及び希少野生動植物種となっている。これまでの調査で確認された生育地点、生育個体数は、輪島市で1地点、1個体、珠洲市で5地点、53個体であった。2010年から継続観察している珠洲市のサドクルマユリについての開花・結実状況をまとめたほか、白山の亜高山帯・高山帯に分布するものと形態を比較した結果、茎に輪生する葉の位置に両者で違いが見られた。生育地の住民を対象に行ったアンケート調査結果からは、園芸目的での採集は、現在ではほとんどなく、林床の藪化といった生育環境の悪化が、サドクルマユリの個体数減少の主な要因であると考えられた。

能登半島に自生するクルマユリ(Lilium medeoloides)の現状と白山のクルマユリとの形態比較」(PDF:1,051KB) 

 

石川県のブナ科樹木3種の結実予測とクマの出没状況,2014

野上達也・中村こすも・小谷二郎・野崎英吉

ツキノワグマ出没予測のためのブナ、ミズナラ、コナラの2014年の結実予測結果と2014年に発生したマイマイガによる各樹種の葉の食害状況についてまとめた。各種約20か所の雄花序落下量調査では、コナラ、ミズナラは豊作、ブナは大凶作と予測された。また、着果度調査ではコナラ、ミズナラは並作、ブナは凶作と予測された。この結果から、ブナ、ミズナラの結実が悪くなると予想されたことから石川県環境部自然環境課ではツキノワグマの出没注意情報の発令を行ったが、9月以降、出没件数は大きくは増加せず、2006年や2010年ほどの大量出没は起こらなかった。また、マイマイガによる被害は低地よりも標高が高い白山麓で食害度が大きかった。

石川県のブナ科樹木3種の結実予測とクマの出没状況,2014」(PDF:1,426KB) 

 

白山公園線(石川県)におけるセイタカアワダチソウ(Solidago altissima)の分布と除去(3)

野上達也・宮下峻

白山公園線(風嵐~市ノ瀬までの約10.6km)及び白山公園線から枝分かれする工事用道路、市ノ瀬園地においてセイタカアワダチソウの分布調査と除去作業を行った。その結果、分布地点は道路沿い39地点、工事用道路29地点、市ノ瀬園地2地点の計70地点で、2013年に比べると増加したが、2012年と同程度だった。除去作業では67.2kgのセイタカアワダチソウを除去した。2012年、2013年に比べると除去量は減っているが,減少率は低下した。また、開花茎数は589本、非開花茎は3,766本、全部で4,355本で、2012年、2013年に比べ減少していた。わずか2回の除去では、完全な除去には至らないものの一定の除去の効果はあるものと考えられた。

「白山公園線(石川県)におけるセイタカアワダチソウ(Solidago altissima)の分布と除去(3)」(PDF:1,289KB) 

 

『本朝年代記』記載の白山火山活動記録の検討

東野外志男

これまで白山火山が活動した年について、必ずしも一致していない『本朝年代記』の記事の再調査を行った結果、白山火山の活動に関連するのは、延応元年 (1239) と天文16年 (1547)、天文23年 (1554) の記事である。大森 (1918) など が『本朝年代記』に記されているとした治承元年の噴火記事は、神社の炎上記事を誤って白山が噴火したと理解したためと推測される。延応元年の記事は、最近、14C法によって12~13世紀の年代が得られた火砕流の噴出に対応する可能性は必ずしも否定できないが、史料的価値が低いことから、この記事のみをもって、ただちに白山が延応元年に噴火したと判断することはできない。今後、延応元年の記事のもととなった史料の確認や、他の史料からの傍証等も含めて、記事の信憑性の検討が必要である。

「『本朝年代記』記載の白山火山活動記録の検討」(PDF:944KB) 

 

「白山自然保護調査研究会」平成25年度委託研究事業成果要約

白山自然保護センターが白山自然保護調査研究会に委託している平成25年度委託研究事業における研究(白山の亜高山帯・高山帯の植生地理とその長期変動、白山の高山植物の生態学的研究-白山地域の樹林帯における開花植物とハナバチ類の関係-、石川県内に生息する野生ニホンザル個体群の動態について、透過型砂防堰堤による生態環境、水理環境の改善効果の検証)の要約を紹介した。

「白山自然保護調査研究会」平成25年度委託研究事業成果要約(PDF:775KB)

 

 

 

ダウンロード

「石川県白山自然保護センター研究報告」(第41集)(PDF:4,379KB)

 

お問い合わせ

所属課:生活環境部白山自然保護センター 

石川県白山市木滑ヌ4

電話番号:076-255-5321

ファクス番号:076-255-5323

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